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「で、でも僕は…っそ、そう言うことで頼るのは嫌だって、思って、でも出来てないからこ、こんなことになっちゃったんですけど」


気持ちばかりが急いて上手くいかない。
舌は噛むし、もごもごしてしまうし、喋れば喋る程顔の温度ばかりが上がっていく。


「藍沢さん、こっち向いて」

「え…あっ!?」


突然声をかけられて戸惑い気味に顔を上げると、タイミングを測ってたみたいに素早い動作で顎を掴まれ顔を上げさせられた。


「…っ?」

「……」


無理矢理こちらを向かせた癖に無言のままじっと見つめられてしまって、どうして良いのかわからなくなる。

榎本さんの顔を見るのが何だか怖くて、思わず目を反らした。


「うぐっ」


と同時に首筋に圧を掛けられてびくんと体が跳ねた。
本来曲がるはずの無い方向に筋を伸ばされて榎本さんの腕にしがみつく。


首、攣る…っ


無理な体制に耐えられずびくびくと脈打つがわかる。
観念して榎本さんの顔に視線を戻せば、手の力は緩み顎を固定している方とは反対の手で優しく頭を撫でられた。


「反省してる?」


至近距離で形の良い唇が動いて、不覚にも胸がときめいてしまった。

反省してるか、との問いに夢中で頷けば少し榎本さんの目が優しくなったような気がした。


「…許してあげますよ」


抱え直すように脇の下に回された腕にぎゅっと抱きしめられて、ホッと胸を撫でおろした。


「そんな顔しないでください。まるで俺が虐めてるみたいだ」

「…っそんなつもりじゃ、あ…っ!?」


急に太股の内側をぐっと押されてむず痒いような鈍い痛みが走り、思わず変な声が出てしまった。
反射的に背を丸めて榎本さんの腕を掴み振り払おうとするけれど、もちろんびくともしない。


「ちょっ!?な…っ、んんっ」


筋肉と筋肉の間の筋を探るみたいにぐりぐりと強い力で押しては離し、また別の場所に移動しては離すを繰り返された。


「筋肉が薄いんだよなあ」

「っ?な、に…、、」

「ここも…こっちも…、バランスはいいけど全体的に細身だし」

「ちょっ、聞い、て…っ、んああっ」


太股、わき腹、腹筋と移動した手にいきなり胸を揉みしだかれ、おまけに突起を指で挟まれてしまった。


「胸筋は文句なしっすけどね」

耳たぶを甘噛みされながら聞こえてきた声が、いつもの榎本さんらしからぬ楽しそうな弾んだ声だったので、悪い気がしない。


「か、からかわないで下さい…」


むにむにと揉み続ける手を振り払う。
すると浴室内に響き渡った自分の声だけが聞こえて、それだけでもう顔面を中心に血圧が上がっていくのがわかる。


「心配しなくても、もう致したりしないっすから」

「い、いたすって…」

「それより、それ一回抜きます?手伝いましょうか」


それ、と言われた意味が理解出来ず榎本さんの顔を見上げ視線の先を辿ると、見事に立ち上がった自分の息子がいた。


「……結構です」


再び俯いた真っ赤な顔を今度は上げられそうになかった。




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