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男なら自分の事は自分でやれと思うんじゃないだろうか。
少なくとも僕はこんな事で頼るのは嫌だった。
いつも無表情だから解りづらいけど、忙しそうに動き回っているのを知っているから尚更。
ただでさえ多忙な榎本さんの手を煩わせたくなかったんだ。
「……榎本君の前の恋人ってさ」
「…?」
俯いたまま考え込んでいると、理事長の落ち着いた声が聞こえてきて僕は顔をあげた。
視線を合わせればにこりと微笑んでくれる。
「190センチ越えの大巨漢だったんだよ。…それもボディービルダーみたいにムキムキの」
「…っひゃく…きゅう、じゅ…?」
「びっくりでしょ?彼にとって重要なのは外見じゃなくて内面らしいからね。俺には考えられないけど」
「………」
「その人と比べたら榎本君には樹くんがか弱いお姫様みたいに見えるんじゃない」
「え…?…な、に…」
「お ひ め さ ま」
顔が熱い。
「まあ榎本君はあのガタイだからある程度の相手は全部華奢に見えちゃうんじゃない?」
「そ、…ですか」
すっかり上げられなくなった顔に、もの凄い早さで熱が集まっていく。
「俺からみても樹くんはすごく可愛いと思うよ」
「!…なっ」
「本当だよ。虐められて泣いてる時の顔がたまらなく可愛いよね」
「…っ」
ぷすぷすと音がしそうな程赤くなってるのを自覚して顔面を両手で覆った。
「あははっ、耳まで真っ赤」
「…っ、からかわないで下さい」
耳を引っ張る理事長の手をつい、ぱしっと叩き落としてしまった。
「…あ……ご、ごめんなさい」
なんて事をしてしまったんだろう。
仮にも上司の手を振り払うなんて。
怒られるのを覚悟して恐る恐る視線を上げる。
「ふふ、元気でた?」
「…あ……はい」
「そう、それは良かった」
僕の予想に反して理事長は穏やかな笑みを浮かべている。
「話、聞いて下さってありがとうございました」
ああ、この人に話してみてよかった。
口べたな僕が最後まで挫けずに話を伝えられたのは、きっと理事長のおかげだ。
相談したことにより胸につかえていたものがすっと取れ、随分と気持ちが整理されていた。
「いいよいいよ、そんなに畏まらなくて。ちゃんとお礼は貰うから」
一瞬言われた意味がわからなくて目をぱちくりさせる。
「…え」
「またまたぁ〜、わかってる癖にぃ〜」
いつの間にか押し倒され反転してしまった視界の中で、超がつくほど良い笑顔でにこにこしてる理事長を見て思った。
大人は簡単に信用しちゃいけないんだ、と。
素早い動作で足の間に割って入られ、理事長自身も膝でベッドに乗り上げてくる。
「わ、わかりませんっこんな…っ」
「さっきから樹くんの生足がここからチラチラ見えててオジサンもう我慢の限界」
「うわ…っは、離して…、嫌だ…っ!」
膝裏を持たれ足をぱっくりと開かれて、性器どころかお尻の穴まで丸見えになってしまう。
真面目な話で今まで忘れていたけど、そういえばシャツだけしか身に付けていないんだったっけ。
視線に晒される面積が少しでも減るようにとシャツの裾を必死で引っ張る。
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