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「あーあーあー。やらしい音だしちまって。穴ぐちゃぐちゃじゃねえか」
「ひっく…も、やめ…ひっ」
「お前等ごちゃごちゃうるせえんだよ」
「んんっ」
バイブがズルリと抜かれて、かちゃかちゃという金具がぶつかる音が聞こえた。
「この穴は俺のもんだって初めから言ってんだろ」
もしやと思い視線を向ければ、案の定そこにはベルトを緩める赤井君がいた。
「――…ひっ、い、いや、やだやだやだ…っ!やめ…っ」
なま暖かくて堅いモノが入り口に触れる。
内股を締めようと力を入れるけど上手くいかない。
「そんな…っなんで、、あっ、あっ、誰か――っ」
赤井君の性器が圧を増して内壁を押し広げそうになった時、突如として旋風が巻き起こり、鼓膜が破れそうな程の轟音と共に教室の金属製の引き戸が勢いよく吹っ飛んだ。
「……、…え?」
吹き飛ばされた扉は前方に転がっており、見事に真ん中に窪みが出来ている。
「んな…っなっ」
僕の位置からはちょうど赤井君の大きな体が視界を遮っているので、誰だか人物を特定する事は出来ない。
こんな状況前にもあった…。
「え、え、何この人…え、こわっ、…えっ?」
僕には床を鳴らしながら近づいてくる黒い革靴だけが見えた。
「その猫、保護しに来ました」
榎本さんの声だ。
地を這うような低い声に身の毛がよだつ。
「ふ、ふざけんな…っこいつは俺の――」
赤井君が言葉を言い終わる前に鈍い破壊音と共に、赤井君の足下の床へと榎本さんの重そうな右足がめり込んだ。
「…、さすがに生徒殴るわけにはいけないんで、さっさと散ってくれませんか」
びくぅっと身を縮こませた拍子に、先っぽだけ挿入されていた性器がにゅるんと抜けていき、同時に鼻にかかったような変な声が出てしまう。
綺麗な木目調の床は見るも無惨な姿になり、板が割れて尖ったものが上へと突き出ていた。
「3人共2-Gですね。赤井敦、英キイチ、青柳一。処分は追って連絡します」
「チッ、顔見ただけで名前までわかるのかよ…」
「喫煙、飲酒、恐喝にレイプ。警察沙汰にならないだけでもご両親に感謝しなさい」
「テメェ…さっきから聞いてれば調子に乗りやがって」
赤井君は額に血管を浮き上がらせて榎本さんを睨みつけた。
「あ、あっくんっ。ここは引いた方が良いって!」
「そうだよ!お前あの目を見ろ、殺し屋の目だぞ…!」
僕の位置からでは、赤井君のおっきな体が影になって榎本さんがどんな顔をしているのかわからない。
「ふざけんなっ。この状況でこいつ渡したら毎日拡張し続けた俺の努力が水の泡だろうが!!」
「毎日…?」
「ばっばかっ!んもうっ青柳!!」
「赤井!今回だけは諦めろ、な!秘書サン相手じゃ分が悪い。東京湾に沈められちまうぞ!と言うことでっ、とりゃ!」
「ぐえっ」
鈍く、重そうな音を立てて鳩尾辺りに青柳くんの拳がめり込んだ。
「て…っめ、えら…覚えてろ、…よ」
崩れ落ちて、意識が無くなっていくみたいな赤井君を青柳君の腕が抱き留める。
すぐにぐったりした赤井君を、英君も手伝って、まるでここに運ばれて来た時の僕みたいに肩に担ぎ上げて、教室を出て行った。
二人に耳元で「お兄さん、ごめんね」って言われて、何だかやっぱり憎めないなあと思った。
みんなが居なくなったおかげで、僕の前には遮る物がなくなり、榎本さんの真っ直ぐな視線と対峙していた。
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