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カラカラカラ……カタン、、


何の音だろう。
それはすぐそばまで近づいて止まり、また近づいては止まった。

「…っ」

目を覚ました瞬間から又しても頭痛と全身の倦怠感に襲われる。
先ほどよりは少しマシになっていたけど、痛いものは痛い。

眉間に皺を思いっきり寄せながらうっすらと片目だけ開けた。

あまりの眩しさに視界が定まらない。
いくら目を開いてもいつまでも白ばんだ世界のままだ。

そこでおかしい、とやっと気付く。
自分はちゃんと目を開けているつもりなのにいつまでたっても景色が変わらない。

手を目元まで持っていこうとして、腕が上がらないことに焦った。
布団の中に納められた手に力を込めるも、その先だけがぴくりと動いただけだ。


ところが首を降ったのがきっかけであっさりと視界は開ける。

何の事はない、ただ目元に水分を含んだ布切れがかかっていただけだった。
ほっと胸を撫で下ろし、ちっとも言うことを聞いてくれない体に鞭を打って辺りを見回すと、ベッドよりも少し高い位置に置いてある白く丸いテーブルが見えた。
ここからはその全貌は見ることは出来ないが、どうやら竹筒の先の方だけ確認できる。
それはとても小さな鹿威しのようだった。

ああ、さっき聞こえたのはこの音だったのか。

元から備え付けられていたのか、誰かが置いてくれたのかわからないが、耳に優しいその音は、今も常に襲ってくる頭痛や体の痛みを少なからず軽減してくれているようだった。

瞼を降ろしその音色に聞き入ってみる。

………………ん?
鹿威しって水が流れて動くんじゃなかったか?


ところが、おかしな事に何度耳を澄ませてみても水の音は愚か卓上型の鹿威しなら内臓されているはずのモーター音さえも聞こえてこない。
どうしても気になって再び目を開けると、さっきと違う景色に喉がヒュッと鳴った。

「目が覚めたのか」

目の前にいきなり映しだされたとんでもない美形の男に息が止まるかと思った。
金色の長い髪にスカイブルーの瞳。
映画館のスクリーンでしか見たことも無いような男の容姿に、目だけを精一杯開いて俺は驚いているんだという事を告げる。

「……そうか。まだ声が出ないか」

声音までも完璧なその男は一度だけ俺の髪を梳いて「もう一度寝ろ」と言うと冷たい手で瞼を撫でた。

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