謎の頭痛
目覚める時は使い古した目覚ましの音と決まっていた。
音質は悪いわりに音だけ大きく、耳障りこの上無いが慣れてしまえば何てことはない。
それがなければきっと部屋に泥棒が侵入してきたって気付かないだろう。
子供のころからお世話になっている低血圧も更に拍車をかけて、そのくらい俺の寝起きは最悪なものになっていた。
耳障りなあの金属音が無い代わりにこめかみから後頭部にかけて強烈な激痛に襲われる。
おまけに全身に纏わり付くなんとも言えない倦怠感。
震えるほど寒いのに顔だけが熱いのは発熱でもしてるんだろうか。
「……っ、…は」
声を出そうとするけどかすれた音にしかならなくて早々に諦めた。
強烈な頭痛により紛れていたのか、どうやら喉も痛いみたいだ。
息をするのも苦しい。
風邪なんかひくの何年ぶりだろう。
上下する胸の動きに合わせてひゅーひゅーと音がする。
まてよ。あの巨大な水溜まりに落ちたのは夢じゃなかったんだろうか。
夢だと思いたいけどどう見たって今俺が横たわってるこのふかふかのベッドは自分ちのものじゃない。
だとすると現実に起こったことだと考えるのが妥当だろう。
ーーそこまで思い至って、考えるのを止めることにした。
というか、意識を保つのが限界だった。
かろうじて開いていた瞼が自分の意思を無視して降り始める。
明るかった世界がだんだんと暗闇を濃くしていった。
[ 7/9 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]