3*

榎本さんは終始無表情で、強めに扱き始める手の動きもすごく事務的だ。

僕は自分だけ気持ちよくなってるのが恥ずかしくてたまらなくて、目を瞑るだけで精一杯だった。
もう何も考えられない。


「責任とりますから、これ出したら言い訳聞いて下さい」


榎本さんの声、すごく遠くから聞こえる。
僕の喘ぎ声、すごく近い。


だんだん速まっていく手の動きに、みっともなく声をあげ体が跳ねる。


「んぅっ、あっあっ」

「痛い方が気持ちよかったんでしたっけ?」

「ひっ、や…っ痛いのっ、や、んんぅっ」


くちゅくちゅいやらしい音が脳の奥に響いて聴覚も犯して行く。

だらしく漏れる声はもう気にならなくて、生理的な涙がぽろぽろこぼれた。


「…ウソツキ。乳首引っかく度にこんなになってるのに」

「や…っこわ、怖いっ」

「………怖い?」


僕は必死にうなづく。
もう形振り構ってられない。

だって自分が自分じゃないみたいになっちゃうし、色んな所を触られるとすぐに訳がわからなくなってしまう。

こんな敏感体質望んでなんかいなかったのに、僕が全部悪いみたいに言ってくる人たちみんなが怖かった。


一層スピードを増す榎本さんの右手に爪を立ててめちゃくちゃに頭を振る。


「死んぢゃう…っしんぢゃうぅったすっ助け、てっんああっ」

「捕まえててあげるから、大丈夫」


爪を立ててた方の手を優しく包まれて、指の間に榎本さんの指が入ってくる。

キュッと力を込めて握りかえすと同時に、仰け反って無防備にさらけ出された首筋に噛みつかれて、鋭い痛みと快感が僕を襲った。


「ひぃッ?!んんっやっ、あっあっんあぁあああッ!!!!」


性器から今日始めて出させてもらった粘土の高い白い液体が溢れた。
それは長く強烈な快感だった。


「…は…っはぁ…っ…」

「もしかして、今日イかせてもらってない?」

「……っ」


淡々とした言葉と、お腹の上に溜まった半透明の水たまりを広げるように塗りつけられて、一気に顔に熱が集まる。


「……へぇ」


みるみる真っ赤になってく顔を見られたくなくて、首が吊りそうなくらい横を向いて目をぎゅっと瞑る。

唯一自由に動かせる左腕で顔を隠すけど、すぐに取り払われてのぞき込むみたいに榎本さんの綺麗な顔が近づいてきた。


「…やっ……」

「………」


その左手にも指が絡まり張り付けられたみたいな体制のまま、まるで観察されてるみたいに無表情で舐めるように見られて、居心地の悪さに視線を揺らした。


手に付いたままの精液が気持ち悪くて、絡まった指をもぞもぞと動かして様子を伺う。

それでもウンともスンとも言わない榎本さんに居たたまれなくなって、また目をぎゅうっと瞑った。


口元に柔らかいものが触れて離れていく。
目を開くと仏頂面の榎本さんが居た。


「…テッシュかタオルあります?」




…今のむにっとしたの、何だったんだろう。







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