秘書の誘惑*

俯いているせいで榎本さんの表情はわからないけど、きっとあまり喋らない僕にイライラしてるんだろう。
組んだ腕を一定のリズムで人差し指でトントンと叩くのが見えた。

嫌な沈黙に、資料を持った手に力が入る。


「理事長を誘惑して楽しかった?」

「…なっ…ゆ、え?」

「どんな手使ったんだ?あの人ノンケだからそう簡単に落ちないはずなんだけど」

「そ、…そんなっ」


口を挟む暇もなく畳みかけるように喋る榎本さんに、一言も言い返せない。
鼻と鼻がくっつくくらい間合いを詰めて、僕の目をのぞき込むようにして彼は言った。


「目的は?金?それとも何か弱味を握りたい理由が?」

「…?」

「わざわざそんな格好で出てきて、誘って無いとでも言うつもりですか」

「ぃあ…ッ」


鎖骨の間を人差し指で突かれた痛みで一歩後ろによろけた。
すかさず捕まれた腕に視線を下げて、僕はやっと自分が半裸な事に気付いた。

いつもの癖でシャワーを浴びたあと、上を着ないでそのまま出てきちゃったんだ。


「ちが…っ、こ、これは癖で…って、え?ぅわぁっ」


スローモーションで扉が閉まり、オートロックが掛かる音が聞こえる。


「どうせならあんなド鬼畜野郎じゃなくて俺のちんこくわえろよ」

「…っ、えっ?うわぁっ」


どうやられたか分からないけど、気が付いたら僕は左手で床に両手を一纏めに抑えつけられ榎本さんに跨られていた。

床に打ち付けた後頭部が痛い。

てか、ちんこって。
そんな綺麗な顔で事を言うんだ。

それに誘うって……!
女の子じゃあるまいしそんな事しようとも思わないし出来ないよ!

……なんて、言えない。
寧ろ一言も発せられない。

何故なら僕のちんこは榎本さんのもう片方の手によって捕獲されているから。
手首の痣になってる所に集中的に圧をかけられてるのは、きっと気のせいじゃない。

覆い被さっている鋼のような肉体が怖かった。


「吐けよ。拷問は得意なんだ」

「――っ、ゃ、だっ」


いっそう強くなった股間の痛みに声をあげると、終始不機嫌そうに皺を寄せていた吊り眉が片方だけぴくりと動いた。

「……」

「ぼ、く、ほんとに何もーー」

「てか、何勃起してんすか」


握られてる股間はそのままに拘束していた腕を放されて、おもむろに胸へと手が伸ばされる。

数時間前とはいえすでに理事長にしつこいくらいいじられて真っ赤に腫れてたのに、痛みのせいでピンと尖ってしまった乳首をいきなり強い力で抓りあげられた。


「全部真っ赤じゃねえか」

「ひゃ、あッ」


摘まんだそれを左右にくにくにと弄られて、更に股間に熱が集まっていく。
顔どころか全身が熱い。

そんなにされたらまた気持ちよくなってしまう。
なんでこんなことするんだ。




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