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やらなければいけない事は分かりきってるのに、それでも腰が重いのは頭の中でさっき理事長にされた卑猥な所業が鬱積と一緒に支配しているからだった。

体を触られた時、凄く怖かった。
怖くてすぐにでも逃げ出したかったのに、触れられれば触れられるほど頭がぼーっとして、でもやめて欲しくなくて…。
頭の中で考えてる事と体の反応が噛み合わなくて混乱した。

本当はこんな体、大嫌いだ。
こんなマイナス思考な自分も嫌い。

どんどん暗くなっていく考えに飲み込まれそうになって、濡れたままになってる頭をタオルごと抱え込んだ。

背中にチャックが付いてて、脱いで捨てられたら良いのにと思う。
リセットボタンなんてものがあって、人生の好きな所からやり直せる機能なんかでも良い。


(あ…、そういえばあの人のせいで女の人が苦手になったんだっけ)


こんな暗い気持ちになった時、必ず思い出すのは蝶子さんのことだ。
彼女と一緒にいた間に要求されたプレイは数え切れなくて、僕の体は普通のセックスじゃすっかり満足出来なくなってしまっていた。

あんな事しようとするのなんて蝶子さんくらいしかいないだろうと思ってたのに、この学園に来てしかも初日でこんな事になるなんて…。

流石に逃げ出すのはマズかったと思う。
だって、あの後どんな顔してあの場にいればよかったのかわからなかったんだ。

ぶっちゃけもう二度と会いたくない。

あのときの理事長の熱っぽい声が耳に張り付いてとれなくて恥ずかしさに涙が出そうだ。
あの人の毒気は僕には強すぎた。

でも資料は取りに行かないといけない。これは仕事だから。
明日からで良いと言われたけど、出来れば今のうち読んである程度内容を頭に入れておきたい。
だけど理事室に行けば理事長に会ってしまうし、理事会があるって言ってたからいない可能性もあるけど、そもそもいなかったら理事室にも入れない訳で…。
会いたくないけど会わないと目的が達成できなくて、どうしたらいいんだと顔を手で覆った時に、部屋のインターフォンが鳴った。


「?はーい」


まだこの学園に知り合いは居ないから驚いたけど、とりあえず返事をしてオートロックの鍵を外し扉を開けた。


「どうも」

「…えっ!?」


最初に目に入ってきたのは金色の髪の毛。
次に射抜くように鋭く射抜くように真っ直ぐな青眼。

そこに居たのは理事室で理事長をボッコボコにしていたあの彼だった。
僕と同じくらいにある目線は睨んでるようにも見える。


「これ、忘れ物っす。気を付けて下さいね」

「……すみません…」

「それは、これを届けてもらった事に対して?それとも、さっきの理事室での行為に対して?」


いきなりのストレートな物言いに、どう答えたらいいのかわからなくなってしまって、わざわざ届けてくれた資料を受け取りながら視線を落した。

彼はとても怒ってるのだろう。
強すぎる目力プラス綺麗に整いすぎている顔のせいでまともに視線を合わせられない。

理事室へ連れ込まれたのも元を正せば僕の手当をするためだったのだから、やっぱり僕が悪いのかもしれない。
だからと言ってあの行為を肯定する訳じゃ無いけど、責められるべき原因は僕にもあったんじゃないかと思う。


「…、…どっ…ちも、です」

「……」




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