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金髪さんが敬語を使ってる事から理事長よりも立場が下なのは明らかなのにどう見てもそうは思えない現状に僕は混乱していた。
てゆうか…、
……今、逃げちゃえば良いんじゃない?
うん、そうだ。
そうしよう。
それが今できる最善の行動だ。
行動力の無い僕も今回ばかりは自分でも驚くほど俊敏に動けた。
こっちに気が付いていない様子の二人を横目に、今までに無いくらいの早さでちゃっちゃと服を身につけ、お腹を拭いたパンツをポケットに突っ込むと、やっと力の入るようになった足を奮い立たせる。
「…あ、あのっ!」
「あ゙?」
「ししし、失礼します!」
腰を九十度に曲げふかぶかとお辞儀した時、凄く怖い顔して振り向いた金髪さんと目が合って思わず怯みそうになる。
足が竦んでしまう前に視線を反らして一目散に駆け出す。
「おい、ちょっ」
後ろから聞こえてる声を振り切るようにきつく目を瞑り、僕は脱兎のごとく駆け出していた。
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僕にあてがわれた部屋はこの学園の敷地内に建てられている学生寮の中に入っている。
その途中で見える水瓶を持った女神像の噴水や、動物の形に切りそろえられた植え込みは見事で、それらに心を落ち着かされつつも理事室から20分くらいの距離を歩いた。
寮の管理人さんだという原さんに挨拶しようとしたけど、扉の所に外出中と札が駆っていたのでそのまま部屋に直行する。
部屋についてからはまずシャワーを浴びて汗と色んなものでべたべたな体を綺麗に洗い流した。
まだ触られた箇所がジンジンしてる。
上半身は裸のまま濡れた髪をわしゃわしゃと上質な真っ白いタオルで拭きながらリビングへ向かう。
部屋の調度品の40インチはありそうなテレビをつけてこれまたふかふかな白いソファーに腰掛けた。一人部屋にしてはやはり広すぎなような気がして、心細さを感じたけど、一日目でホームシックなんて早すぎでしょとホッペをペチッと叩く。
(そうだ。今日もらった資料でも読んできを引き締めなくちゃ)
どこに置いたんだっけと部屋をぐるりと見回しかけて、今度は自分の目の前がぐらりと揺らいだ。
そう、僕は大事な大事な仕事道具ともいえるそれを理事室に忘れてきてしまったのだ。
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