3*

ここから一刻も早く逃げなければいけない。
このままじゃダメだ。

もちろん理事長に力比べで勝てる訳が無いので、僕がここから逃げ出すには、きっとたぶん今しか無い。
そう思いたって力の入らない足に試しに力を入れてみるけど、ぴくぴくと痙攣しただけでそれっきり動かなくなってしまった。

こ、この役立たずめ!


「…まさかお尻の穴まで開発済みなんてことないよね?」


真顔が無駄に怖い。
理事長の問いに思い当たる事があって、まるで石化したみたいに動けなくなった。
そんな僕の様子を見て眉間の皺をいっそう濃くし、更に間合いを詰めて理事長は言った。


「り、りじ」

「見して」

「……………………………………え?」



「見 せ て」


理事長の目があり得ないほどギラついてる。怖い。

もしかして今日は人生最悪の日なのかもしれない。
来栖くんに痛めつけられた腕は青あざになってしまっているし、それを手当てしてくれたはずの優しい理事長は今はケツの穴を見せろと迫ってきている。
そんな所をどうしてそこまでムキになってまで見たいのか僕には全然わからないけど、理事長はすごく真剣だった。

しかしここではいどうぞと股を開く訳にはいかない。


「お、おちついてくださ…うわあっ」


どうにか落ち着いて欲しくて開いた口からは思ったより弱々しい声しか出なかった。
泣きたい。


「てゆうか見るから」

「……え、ぅわっ!!」


抵抗はあっさり無視されて、膝裏を胸につくくらいに折り曲げられてしまう。
あまりの姿に体中の血液が顔に集まってせめて足ぐらい閉じようと内ももに力を入れてもぴくりともしなかった。ちくしょうやっぱりか。

いつの間にかつま先に引っかかっただけのパンツもあっさり取り払われていた、とうとうTシャツ一枚にされてしまった。
胸まで託し上げられたシャツの隙間から、理事長にいじり倒されて真っ赤になった乳首が見え隠れしている。

こんな体にこんなことして何が楽しいんだろうか。
背だって成人男子の平均よりはずっと高いし、確かに色は白いけどそこそこ筋肉だって付いてる。
だったら僕にはさっき会った花菱君の方がよっぽど魅力的に見えた。
まあ生徒に手を出すわけにはかないんだろうから僕はその点都合がいいんだろう。


「ちょ…っま、やめてっ」


なんでこんな事になってしまったんだ。
舌で長い指を濡らす理事長と目が合って、なんでって聞いたけどこの状況から考えられる事なんて一つしかなかった。


「やっぱ見ただけじゃわかんないや」


痛いのが気持ちいい僕の体がいけないの?
いやこんな性癖普通に生活してればバレないはずだし、現にさっきは何の問題もなく理事室から脱出できた。
その後栗栖君に会って…って栗栖君が原因?

違う。だって栗栖君に絡まれたのだって僕がはっきりしなかったせいだ。
やっぱり僕が悪いんだ。
僕が全部…。




ずぷぷ…っ


「――ッ、ひあぁああ……っ!?!!」

「キツいね」


いきなり指を入れられて、痛みに声がひきつる。
ちょうど仰け反った喉に舌を這わせられて、甘い声も一緒にあげた。
無遠慮にぐにぐにと入ってきたそれは、一旦ぐるりと内壁をかき混ぜてから何かを探すように中を蠢いた。


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