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『ありえない…』
ぽつりと呟いた言葉は、降りしきる雨に掻き消された。
今日の降水確率は10%だと、今日朝見たニュースではやっていた。なのに何故雨が降っているんだ
一応鞄に入れておいた折り畳み傘に今日ほど感謝する日は無いかもしれないと密かに考えながら私は傘を開き、ザーザー煩いその場所へと出た
校門の周りには色とりどりの傘が集まっていた。綺麗だとかそれ以前に邪魔でしかない
それに傘の持ち主たちは皆女の子で、誰かに向かって甲高い黄色い声をあげている。迷惑極まりない
その間を何とか通って校門をくぐると、誰かが「神原さん」と呼ぶ声が響いた。同時に背中に突き刺さる複数の視線。
振り返れば、学ランの下に真っ赤なTシャツを着たお隣さんが手を振っていた
「神原さん、また明日ね」
『……』
対して親しくもないのにそんな風に声をかけられる意味は理解できなかったけれど、とりあえず会釈だけして私はその場から離れた
(校門の前にたむろするくらいなら校内行けばいいのに。馬鹿みたいだ)
足を踏み出す度に小さく跳ねる水に足元を濡らされながら道を進む
いっそ、全力で自転車を漕いで帰った方が濡れなかったのかもしれない。まぁ、実際濡れる量は変わらないらしいけれど。それにしたって気分的には違うものがあるのだろう
(…あれ)
ぼんやりといつもの道を歩くなかどこか違和感を感じた。いつもの道に点々と並ぶ街灯に道路標識…、ん?道路標識…?
(こんなところに道路標識なんて、あったっけ…?)
塀の近くにある道路標識。私が今使っている道は、今日の朝までは確実にこんなところに道路標識などありはしなかった
違和感は確実なものになった。そっと道路標識に近付いてみてみればそれは明らかに可笑しな方向に曲がっている。それにところどころ普通に立っているだけではつかないであろう大きめな傷がついていた
まるで無理矢理引き抜かれて、思い切り投げ飛ばされた、みたいな。
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