02 [ 18/25 ]
「神原さん、ちょっとこれ届けてもらってもいいかな?」
帰ろうとしたときに、呼び止められるとちょっとイラッとする。面倒臭いことを頼まれたら尚更。
『誰にですか』
先生から封筒を(嫌々)受け取りながら、聞くと先生はにこりと微笑んで「岸谷くん」と言った
先生がいなくなったあと、携帯を開き、電話帳から彼女の名前を探す。番号を画面に表示して通話ボタンを押す。何回目かのコールのあと、ガチャリと電話に出る音がした
『あ、もしもし?迎え、来てもらってもいいかな――?』
***
迎えに来てくれた彼女のバイクに乗って、届け主のマンションへと到着。相変わらずデカイマンションに住んでる、家賃いくらだよ
エレベーターの乗って階数のボタンを押す。ちなみに連れてきてくれた彼女はバイクをしまいに行ったから私は今一人である
部屋の前にたどり着いて、ピンポーンとインターホンを鳴らすと、「鍵開いてるから勝手に入ってきていいよー」と返事が返ってきたので、勝手に入ることにした
「おかえり、菜音」
『ただいま』
中に入るとテーブルの上に包帯やら消毒やらが出ている。新羅も手を動かしながら私と喋っているので、誰かの治療をしているようだ。
「届けもの、だっけ?僕の部屋に置いといてもらってもいいかい」
『了解』
お客さんの顔をじろじろ見たりするとか失礼なことはせずに、私はさっさと新羅の部屋に向かう。
見覚えのある顔の人が新羅に手当てされていたような気がするけど、…多分、気のせいか。よく見てないし
ガチャリとノブをひねってドアを開けて部屋へと入る。新羅の部屋は医学系の専門書とかが結構あって、正直邪魔だとよく思う。でも今日は掃除したのかわりと綺麗だと、思う
『ほいっ、と』
パサリ、軽い音をたてて封筒は新羅の机に着地した。よし、用事はこれで済んだ。さ、帰ろう
新羅の部屋から出て、リビングに戻って最初に目に入ったのはわたわたする、セルティの後ろ姿だった。(後に話を聞くとバイクを戻して帰ってきたばっかりだったらしい)
『?どうしたの』
余りの焦りっぷりに声をかけると、セルティはものすごい勢いでPDAに何かを打ち込んだかと思うと、それを目の前に突き出してきた。とっさに手を出してなきゃおでこにぶつかるところだった…ふぅ。
少しばかり間抜けだけれど、そのまま私はセルティが打ち込んだ文に目を通した。
『――新羅の友人が暴れてる……?』
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