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『…パン買えそうにないし、私、帰るわ』
「!え、おい。昼飯どうすんだよ」
『ジュース飲んでしのぐ』
「金、大丈夫かよ?」
『多分』
最大何本買えるだろ。財布の中身を確認してみる。
『…110円。』
「…………」
絶望した。これじゃあ買えてせいぜい一本。パンも安いの一個くらいしか買えない。朝、学校来る前に確認しとけばよかった…。
そういえば、緑の髪で眼鏡をかけていて指を保護している誰かが言っていたことを思い出した。「ラッキーアイテムを持って無い日は何が起こるかわからない」って。まさにこういうことか
とりあえず、帰ろう。エネルギーが摂れない以上無駄な行動は自滅を呼ぶ
『じゃあ、エネルギー消費を最小限にするために帰るわ』
軽く手を振って、踵を返そうとしたとき、平和島が何か投げた。それを反射的にキャッチすると、それはメロンパンだった
「あと、これとこれもやるよ」
『ちょっ、え?』
半ば押し付けるようにして渡されたのはカレーパンとクリームパン。あといちごオレ
「買いすぎちまったんだ。もらってくれると助かる」
『…へ、平和島………!』
なにこの優しさ。平和島は天界からやってきた方なの?そうなの?そうですよね。腕の中のパンたちに羽が生えているように見え始める。やばい
『ありがとう…!助かったよ。平和島大好きだ』
あぁ、もう。この感謝の気持ちはどう伝えればいいんだろう
自分のボキャブラリーの少なさに本日二度目の絶望を感じる
とりあえずもう一度お礼を言おうと、平和島を見上げると、なぜか平和島は片手で顔を隠して固まっていた。
でもなぜか大量のパンはひとつも落ちないと言う不思議。
『平和島…?』
固まって動かない平和島に声をかけてみると、平和島はびくりと体を震わせると、真っ赤な顔で「じゃ、じゃあな!」と言って去っていってしまった
余りにも不自然で、可笑しな様子の平和島が心配になったけど、悠莉を待たせていたことを思い出して、私はパンを抱えて急いで教室に戻った
悠莉に「遅いんだけど」と言われたのは言うまでもない話である
私はそれに軽く謝ると、平和島にどうお礼をしようかな、と考えを巡らせた
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