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「―っ、」
ぼんやりとする意識の中、何かが自分に触れる感触を感じた
重たい瞼は思うようには開いてくれない。ようやく薄目程度に開いた視界に入ってきたのは、大嫌いなあいつの黒だった
自分を今こんな状況にした最大の原因である、あいつの黒。
振り払おうとした寸前で、その黒にはあいつの胡散臭さが無いことに気がついた。むしろ反対にあたたかさすら感じた
そのあたたかさは、するりと離れると、水の跳ねる音と共に消えていった
記憶に残るのはあたたかな黒。そして俺と同じ高校の制服。
そのあともう一度意識を沈めた俺を起こしたのは、いつまでも帰ってこない俺を心配した幽だった。
♀♂
次の日。
俺は残された折り畳み傘とタオル(勿論洗濯済みだ)を持っていつもより早めに学校に向かった。
ただ、これを貸してくれた誰かにお礼を言いたくて。そして、話してみたくて。
「え?このタオルの持ち主を知らないかって?」
「…あぁ」
「さすがにそれは僕にはわからないよ。そういったことなら折原くんのが「あ゙ぁ゙?」…いや。なんでもないよ」
役に立たなかった上に余計なことを口した新羅を軽く伸して、とりあえず記憶を辿って探してみることにした
(…わかる、俺にならわかる)
騒がしくなり始めた廊下をすり抜けながら探す、探している相手が本当にこの学校の生徒なのかも、学年も何もわからないまま
(…結局、見つからなかったな)
時の流れは早く、もう帰りのHRになっていた
うだうだと長ったらしい教師の話を聞き流しながら必死に頭を働かせる。そして、気付いた
「あの場所に行けばいいんじゃねぇか!」
善は急げ、とかなんとやら。俺は鞄をひっつかむと、なにやら叫ぶ新羅の声を無視して教室を飛び出した
目指すは昨日のあの場所だ!
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