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「いきなりだが、転校生を紹介する」


土方先生のその一言で教室はざわりと揺れた。前の席に座る平助君が「どんな奴が来たんだろうな」と期待でいっぱいの顔で笑った。

私も平助君と同じ気持ちだったから「そうだね」と笑い返した。転校生ってどんな子だろう。女の子かな?男の子かな?期待が風船みたいに膨らんでいく


「うるせぇ!」


土方先生の一喝で騒がしくなっていた教室内は一気に静かになる。土方先生は一度頷くと扉に向かって静かに「入れ」と言った。

その瞬間、ガラリと教室の扉が開き転校生が入ってきた

そして、私も平助君も、クラスの皆も固まった


『如月リオですっ!よろしくね〜』


無造作に跳ねた艶やかな黒髪に、澄みきった空色の瞳。思わず息の仕方を忘れてしまいそうになるくらい、綺麗な顔をした男の子が、眩しい笑顔を浮かべてそこにいた


『好きなものは、うーんと可愛い子と面白い奴かなぁ…。皆と早く仲良くなれたらいいなーって思ってるんで、よかったら構ってくれると嬉しいな?』


人指し指を唇に当てて如月君は、こてりと首を傾けた。その次の瞬間巻き起こる黄色い声。そして再び響き渡る土方先生の怒号。


「…如月は平助の隣だ。平助、手ぇ挙げろ」

『はーい』
「はいはーい!」


元気良く手を挙げる平助君の方に教卓から下りてゆっくりと歩いてくる如月君。ところどころで「かっこいい」って言う声が上がる。如月君はそれに気づいているようで、周りに笑顔を振り撒いていた

そうしてやっと如月君は平助君の隣へと辿り着いた。


「オレ、藤堂平助!よろしくな。平助でいいぜ!」
『あぁ、よろしく。平助!僕のことも名前でいいよ』
「おう!リオ!」


如月君と平助君はたちまち仲が良くなったようで楽しそうに話している。それを見てちょっと平助君が羨ましくなった。私も如月君と早く仲良くなれるように頑張ろう!


「千鶴ちゃん、千鶴ちゃん」
「?どうしたのお千ちゃん」


不意に肩を叩かれて隣を向けばお千ちゃんが平助君と如月君を指差しながら小声で私に話始めた


「千鶴ちゃんはどう思う?転校生のこと」
「んー、と…綺麗で話しやすそうかな?」
「そう…。気をつけてね。千鶴ちゃん。あぁいうのは危ないんだから!」
「う、うん…?」


よくわからないまま返事をするとお千ちゃんは「もう」と少し困ったように笑った。…私変なこと言っちゃったのかな


「おい千鶴!千姫!」
「あ、何?平助君?」
「なに?」


ぐるんっと勢いよく平助君は私たちの方に振り返ると、満面の笑みを浮かべながら如月君に私たちを紹介し始めた


「こっちが千鶴!オレの幼馴染み。そんでこっちが千姫だ!」
『千鶴ちゃんに千姫ちゃんね、うん。よし、覚えた』


如月君はさっきとはまた違うはにかんだ笑顔を浮かべた。それもまた綺麗だった


「…千でいいわ。よろしく如月」
『うん、よろしくー』


お千ちゃんは少し警戒しながらも如月君と言葉を交わす。その様子を平助君は気に止めていないようで私に如月君についてのことを話してくれた。

何となく気になって平助君に聞いてみたら、「大丈夫だ」とそれだけを言った

それでも気になる2人の様子。平助君の話を聞きながら2人を盗み見ていると、いきなりお千ちゃんが笑いだした


「あはははは!いい、リオあんた最高ね!」
『そう?千にそう言われると照れるよー?』
「嘘ばっかり」
『本当だってー』


和気あいあい、話す前とは180度違う光景がそこに広がっていた

余りの違いに驚いて声も出せないでいると、前で平助君が「言ったとおりだろ?」って得意気に笑っていた

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