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『…、女の子みたいな扱いされるの慣れてないんですよ……』
また俯いてぼそぼそとそう告げる伊織ちゃん。その言葉になるほどなぁって妙に納得してしまった。
伊織ちゃんが、女の子に対してすごく丁寧な接してるのはよく見るけど、伊織ちゃんが女の子として扱われてるのは見たこと無い
男装(?)してるっていうのもひとつの原因なのかもしれないけれど
「へー、そうなんだ」
『そうなんですよ。濡れるのとか別に平気なんで、僕のことは気にしないで下さい』
そう言ってまた僕から離れようとする伊織ちゃんを、今度は片手で抱き寄せる
「ねぇ、伊織ちゃん」
『っ、なんですか、それより離してください』
真っ赤に染まる耳元に口を寄せて、わざと甘く囁くように僕は言葉を紡いだ
「――じゃあさ、これからは僕が嫌っていうほど伊織ちゃんのこと女の子扱いしてあげるよ」
『!?』
ちゅっと伊織ちゃんの額に口付けを一つ落として、「じゃあ帰ろっか」と微笑んだら、伊織ちゃんは小さな声で「沖田先輩の馬鹿」って呟いた
もう雨はだいぶ弱くなってきていた。