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「千鶴ちゃん。リオは大丈夫よ。ただの馬鹿だから」
『ひどいなー、千』


仲良さそうに笑い合う千と如月君。平助君は如月君の肩を叩くと私の方を見てにかっと笑った


「んじゃあ、次は千鶴だな!」
「えっ!」
「リオはいい奴だから大丈夫だ」
『そうそう、大丈夫大丈夫〜』
「あら?藤堂いいの?」
「!うるせーよ!」


言い争いを始めたお千ちゃんと平助君を横にしながら私はちょっとだけ緊張していた。如月君と話すのは初めてだから

如月君はそれを知ってか知らずか私に優しく微笑みかけながら話始めてくれた

前の学校、街のこと、テレビのこと、それによって私の緊張もだんだんとほぐれてきて普通に話せるようになっていた


「あの、私もリオ君って名前で呼んでいいかな…?」
『いいよー、大歓迎!じゃあ僕もランク上げて千鶴って呼んじゃおうかなー?』
「うん!」


にこにこと笑うリオ君につられて私まで笑ってしまう

ガラリと扉が開く音がして永倉先生が入ってきた


「それじゃあ、授業始めるぞー!」
「「「はーい!」」」


永倉先生のその声に私たちは前に向き直った。さらりと揺れるリオ君の髪は綺麗だった


♂♀


―キーンコーンカーンコーン

ガタガタと音を立てて皆が立ち上がる。さっきのは4時間目の終了のチャイム。つまり今はお昼休み。私は鞄からお弁当を取り出すと平助君、お千ちゃん、リオ君の3人に声をかけた

「私たちもお弁当食べに行こう?」
「あー、先に行ってて。私リオとちょっと用事あるから」


お千ちゃんは苦笑いを浮かべてリオ君の服の裾を引いた。リオ君もお千ちゃんに合わせるように言葉を繋いだ


「そうなの?」
『そうそうデートなのー』
「違うわよ。…まぁそういうわけだから」
「わかった!先に行って待ってるね!」


お千ちゃんとリオ君が2人で教室を出ていくのを見送った後、私と平助君は先に屋上に向かった


♂♀


「あ、千鶴ちゃんついでに平助遅かったねー」
「ついでってなんだよ!ついでって!」


屋上の扉を開くと沖田先輩がパンを片手に私たちの方に手を振ってきた。隣にはお弁当を食べている斎藤先輩もいる

平助君のことを華麗にスルーした沖田先輩は口をもごもごと動かしながら「転校生が来たらしいねー」と言った。リオ君のことだ


「あぁ来たぜ!俺たちのクラスにな、千鶴!」
「うん!」


平助君と顔を合わせて笑うと、沖田先輩が近付いてきて平助君の頭を鷲掴みにして後ろに放り投げた。言うまでもないが平助君は後ろに飛んでいってしまった


「へぇー、千鶴ちゃんたちのクラスにかぁ…。男?それとも女の子かな?」
「男ですよ。リオ君って言うんです!」
「…へぇ」


4人で話してる時を思い出して笑顔になりながら答えると、沖田先輩は何だか不機嫌そうに声を漏らした


「…僕は"沖田"先輩で、転校生は"リオ"君、ね…気に入らないなぁ」


パンの袋を握りながら何やらぶつぶつ呟く沖田先輩に一種の恐怖を抱いていると、いきなり勢いよく屋上の扉が開いた

―もしかしてリオ君たちかな?

期待を胸に抱いて振り返ると…


「…我が妻よ。そんなに俺に会うのが楽しみだったのか」
「……妻じゃないです」


風間先輩だった。期待して損した。…お千ちゃんとリオ君、遅いなぁ…


「照れ隠しか。それほどまでに俺に会えて嬉しいのか…」


寝言を言っている風間先輩は放っておいて携帯を取り出して開く。メールも電話も来ていなかった

そして再び屋上の扉が開いた。また期待して振り返ると今度は薫だった。その次は不知火さんや天霧さん…、なかなか2人は来なかった


「千鶴、先に食べてようぜ?昼休みがおわっちまう」
「…でも、お千ちゃんもリオ君もまだだし…」


リオ君と初めてのお昼なんだよ…?そう呟いたとき何故か先輩たちがざわついた。そして代表なのか薫が近付いてきた


「あのさ千鶴…」
「なに?」
「さっきから言ってる"リオ君"って誰?」
「リオ君は新しい友達だよ。今日転校生してきたの」
「…なるほど。会って初日で名前で呼んでるんだね?」
「うん?そうだよ」


そういうと先輩たちはまたざわついた。…なんだろう?

その時、また屋上の扉が開いた



 



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