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「千鶴ちゃん、いるかな?」
いきなり教室に響いたその声に、女子の黄色い声が上がった。何故ならたずねてきたのが校内でもトップクラスのイケメンである沖田だったからだ
名前を呼ばれた千鶴は「はい」と返事をして後ろ側のドアの前に立っている沖田の方へと駆け寄った。千鶴の後ろには平助がくっついていた
「なに?平助。僕は千鶴だけ呼んだんだけど」
「うっせぇ!千鶴が総司に何かされないか心配なんだ!」
「しないよ。今日はあの子に用事があるんだから」
「"あの子"?」
沖田は「そうあの子」と言って一人の生徒を指差した。それは千と談笑している伊織だった
「僕が呼ぶのはちょっとアレだからさ、千鶴ちゃん呼んできてもらってもいい?」
「はい、いいですよ。」
千鶴は少し沖田に疑問を持った。
初対面のときの様子からして沖田はどうみても伊織に好感は持っていなかった。なのになぜ、伊織を呼び出すのだろうか。
もしかして、伊織に何かするつもりじゃ――…!そんな考えが頭をよぎった。
千鶴は伊織の元へと向かおうとしていた足を止め、沖田の方を向いた
「?どうしたの、千鶴ちゃん?」
千鶴はじぃっと沖田を見上げると、少し強めに言葉を放った
「伊織ちゃんに変なことしたら許しませんからね!」
沖田はその言葉に面食らった表情を浮かべたあと、笑い出した。
「大丈夫、ただちょっと一緒にやりたいことがあるだけだから。安心して」
「…はい」
千鶴まだ半信半疑と言った表情を浮かべながらも、今度こそ伊織を呼びに行った
「うわー、千鶴ちゃん過保護だね」
沖田はまだ可笑しいらしくくつくつと笑っている。そんな沖田に平助は言った
「当たり前だろ。伊織はオレ達の大事な友達なんだからな」
「…じゃあ、平助も過保護なんだ?」
からかうようにそう言う沖田に平助はみるみる顔を赤くしていく。
「そうだよ!悪いか!!」
そのまま逃げるように沖田のもとから駆け出す平助に、沖田は更に笑った
「沖田先輩、伊織ちゃん連れてきました」
その声に笑うのを止めて少し視線を下にずらせば、千鶴と千鶴に連れられてきた伊織の姿が沖田の視界に入る
「うん、ありがとう千鶴ちゃん。じゃあちょっと借りてくね」
頭にはてなを浮かべる伊織の腕を掴むと、沖田は爽やかな笑みを浮かべて教室から出ていく。その2人の姿を千鶴は不安そうに見送った。
伊織は状況をイマイチ判断できないまま、ただ腕を引かれるがままに歩いた