『おわったー』
データ保存して電源を落とす。これで今日の仕事はお仕舞い。
鞄掴んで周りにお疲れさま言って着替えて会社を出る。今日も頑張ったやりきった。疲れた甘いものが足りてない
(プリンでも買いに行きますか…)
家に向かっていた足をお昼にも行ったコンビニの方向に動かす。そろそろプリンの補充終わってるよね
ふふふーん、と鼻唄を歌いながら非常に軽やかな足取りでコンビニへの道を進んで行くと、何故かコンビニに近付けば近付くほどに周りの人の顔が青くなっていく。それでも私の足取りは変わらない。プリン、プリン。
そしてコンビニ到着。ほとんど人がいない言うなれば貸切状態。周りには電柱だの看板だのの残骸が散らばっている
気にしないでコンビニの中へと足を踏み入れようとして、私の顔面は何かにぶつかった。「んがっ」というなんとも言えない声も出た。
「…あんた」
『ん?』
顔を上げればあらまぁプリンの縁。またあのお兄さん。えっと…名前なんだっけ
『お昼ぶりですね』
「!お、おう…」
にへ、と笑うとものすごい勢いで顔を反らされた。…そういえば「あんたの笑顔は心臓に悪い」って言われたことがあったような無かったような…。
『なんかすいません』
「!い、いや違ぇ!その俺こそその…悪い…」
『いや、大丈夫ですけど…』
今度は焦り始めたお兄さん。忙しいねさすがはイケメン。綺麗な金髪だよね本当に…、あ、プリン買わなきゃ。
それじゃあ、と中に入ろうとすればなぜか腕を掴まれる。ちょっと痛い
「あの、これよかったらもらってくれねぇか、買いすぎちまって…」
『えっ?』
差し出されたのはコンビニの袋。中をのぞけばプリンのオンパレード、あの特上プリンも入ってる
「あんたもプリン好きなんだろ?俺貰いっぱなしだからさお礼にってことで貰ってくれると嬉しいんだけど…」
いまだに視線はこっちを向いてはいないけど、このお兄さんがどんな顔してるのかは予想がついてしまう。何なんだろうこのお兄さん。きゅんきゅんしてきちゃったんだけど…
『ありがとう、ございます…』
「あぁ」
受け取ったときちょっぴり触れた手。真っ赤になって「…悪い」と呟くお兄さんにこっちまで顔が熱くなってくる
『…お兄さんもプリン好きなんですね、親近感あります』
「あ、あぁ…」
そっぽを向いて視線をうようよ、いやふよふよ?させるお兄さん可愛いなぁ。なんか脇酸っぱい思い出のある青春時代に戻ったような感じがする
『お兄さん、あの…』
「…なんだ?」
このとき私は気付かないうちに、プリンをもらったことによる喜びと、お兄さんへとときめきで思考がブッ飛んでいたらしかった。いやブッ飛んでいたとしか思えないし、思いたい。じゃなきゃ…
『こんなに食べきれないので、よかったら一緒に食べませんか?』
「…は?」
なんて、名前も知らないお兄さんを誘うわけなんて…流石に無い筈だから
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