それはそれはとても暑い真夏日のこと。
私は水分を求めて池袋の街を徘徊していた。本当に喉が渇いて大変なことになっていた。渇いたってか乾いた的なくらいに。例をあげるとするならば某人気海賊漫画のイケメン鰐さんに水分を吸いとられ切った並みにカラカラだったのである
いつもならばすぐに見つかる自販機がこういうときに限って何故か見つからない。あったと記憶していた場所にはただ、一部分色褪せていない地面があるだけだった
あー、私水分不足でそろそろ危ないのかもしれない。だって目の前から自販機を持ち上げながら走ってくる人が見えるんだもの
「待ちやがれ!臨也!!」
「待つわけないでしょ。シズちゃんって本当に馬鹿だよね」
幻覚に加えて幻聴まで発生してきたらしい。有り得ないよね。道路全力疾走しながら会話するとかさ。ましてや片方の人自販機持ってるしさ。隣人の方に怒られちゃうよねホント。てか自販機いいな。携帯できて。携帯自販機とか便利すぎる
「うらぁぁぁあ!食らえ臨也ァァァァァア!!」
「うおっと、」
ブォンッ、すごい勢いで投げ飛ばされる自販機。投げられた先にいた人はそれを華麗に避ける。
で、その避けられた自販機はどこに行くかと言うと…。あ、やばっ貴重な水分代落としちゃった。
「あぶねぇっ!」
『へっ?』
ドガァァァンと素晴らしい破壊音を立てて、私の後方にあった壁に激突しました。わぁ、ファンタスティック。
そんでもって、壁に激突して故障したらしい自販機はゴゴゴゴッと怪しい音を立て始めて…、中に入っていたペットボトルや缶やらをごろんごろんと吐き出し始めた
そう水分取り放題な光景は今の私にしてみれば、そう!天の国と言っても過言ではないと言うわけで…
『いただきます。』
私の中での最大限の俊足で自販機へと駆け寄り、とりあえず持っていた100円を自販機にお供えして、ペットボトル5本と缶を3つ程いただきました。
「おい、手前」
『!ぎょいっ!?』
プルタブを開け中身を口に流し込もうとしたとき、いきなり後ろから声をかけられて、ビックリしたあまりに危うく缶を握り潰しそうになったけど、さすが私、凹んだくらいでおさまった
…やっぱ、缶3つは多すぎたかな。怒られるのかなそんなことを考えながら恐る恐る声の主の方へと振り返ってみると
「大丈夫、みたいだな」
『!』
とんだイケメンがいました。
人工的な金の髪にキリッとした男前な顔。捲られた袖から見える逞しい腕。…なんか、ごちそうさまです
なんやかんやでガン見している私に気付いたのか目の前のイケメンさんはほんのり顔を赤くして、「そんなに見んなよ…」と仰りました。ナニコノヒトカワイイ。
金髪イケメンさんはまだ若干顔を赤くしながらも、「怪我とかねぇか、大丈夫か?」と何故か私の身の安否を確認する言葉をかけてきた
だから普通に何ともないから大丈夫、と返すとイケメンさんは申し訳なさそうに謝ってきた。…謝られる理由がわからないのは私だけでしょうか
「とりあえず怪我とか無くてよかった。悪かったな」
『謝らなくて大丈夫ですよ。私ピンピンしてますから。』
それになんで謝られてるかわかんないのに謝られると何だか心が痛いんで。とは口に出さないで置いて、何となしに手に持っていた缶の1つをイケメンさんに手渡した。
「"美味しいプリンシェイク"…?」
『はい。美味しいって今流行ってるやつなんですよねそれ。よかったら飲んで下さいな』
男前イケメンさんの手には可愛らしいパッケージのプリンシェイク。…異常に似合うのはなんでだろう
「そっか。ありがとな」
『いえいえー』
そう言って笑ったとき、誰かが誰かの名前を呼ぶ声が聞こえてきた
「あ、トムさん…。それじゃあ。悪かったな。んでこれありがと」
『はい』
踵を返して去っていく金髪イケメンさん。その手に握られたプリンシェイクが異常な存在感をかもしだしていた。
…あ、やば。
私も早く会社戻んなきゃ。
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