「櫂、元気かなぁ…」
机の上に置いた腕に顔を乗せながら、ぽつりと呟く
無駄に青い空。
彼も同じものを見ているのかな、て。
中学の時、転校してきた彼はヴァンガードが好きなかっこいい男の子だった。
あの不思議なレンでさえすぐ気に入った、とっても素敵な男の子。
彼がレンやテッちゃんと楽しそうにヴァンガードファイトしてるのを見るのは、私のとって幸せな時間だった
でも、彼は転校してしまった。そして元の街へと帰ってしまった
それから一度も会っていない。
だから、いつも考えていた。彼に会いたい、と。
「会いたいな…」
無意識に呟いた言葉だったのに、返事がきた
「誰にですか?」
ずしっ、といきなり背中にかかる重さ。
ぱらり、と赤い髪の毛が頬を撫でていく
「…レン、重いよ」
「そうですか。それよりも誰に会いたいのですか?」
ちょっと不機嫌そうに言葉を紡ぐレン。…あぁ、これはやばい
レンは何かしらと櫂を気にしている
私が櫂の名前を出すだけで、レンは異常な反応を示してくる
今でさえ、私のお腹をぎゅうぎゅうに締め付けてきている
「スズには、僕がいるじゃないですか…」
「そーですね」
レンの長い赤い髪の毛を指に絡めて弄びながらも、やっぱり私の頭の中は櫂のことでいっぱいになっていた
―記憶の片隅に眠る
(彼の顔が見たいの)
20120128