レンの深紅の瞳には、暗い、暗い光が見えた。


「スズ。僕に黙って出掛けるとはどういうことですか?勝手にどこかに行ってはいけないと言った筈ですが?」

「…ごめん、レン」


怒ってるのに、悲しそうなレンに心臓がぎゅっ、と締め付けられる

その赤い髪へと手を伸ばして、触れようとしたとき、不意に体が後ろに引かれた

背中に伝わる温もりと、固めの感触。櫂が後ろから私を抱き締めていた


「まだスズに執着してたのか、レン」

「…櫂……!」


お互いに睨み合う櫂とレン。言うなれば水面下の冷戦っと言った感じがする。

二人の様子に、周りの人達が固まっている

…うん、わかるよ。
動いたり、音たてたりしたら殺されそうだもの


「スズを離して下さい。櫂。スズは僕と帰るんです」

「別に今すぐでなくてもいいだろう」


そんな二人に挟まれている私は本当に苦しいです。…ってわけでもないです

なんかもうなれた。


「かーい、」

「なんだ?」


私を見下ろす櫂の目は優しい色を灯している

あぁ、一緒にいたい。心からそう思う。でも…


「私は大丈夫だから離して?」


にこっと、櫂に笑いかければ、櫂は少しだけ悲しそうに笑った


「ごめんね、櫂。」

「いや、大丈夫だ」


櫂の腕から出て、レンのところへと近付く。そして今度こそ、そっと赤い髪を撫でた


「レン。帰ろうか」

「…えぇ」


まだ不満そうなレンに、軽く抱き着く。そうしてその細い背中に手を回せば、レンの手も私の背中に回ってくる

ぽんぽん、と小さい子にするようにレンの背中を叩けば、ぎゅっとレンの力が強まる


「スズ、スズ…」

「帰ろうか、レン」

「…はい」


櫂に静かに手を振って、お店を出る

さぁ手を繋いで帰りましょう。みんなが待ってるお城に帰りましょう


―姫と二人の王子

(姫は手を差しのべる)


ぐるぐるまわる 完結

20120128







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