抱き着いた櫂からは、懐かしい櫂の匂いがする。
嬉しくて、嬉しくて夢中で櫂にしがみつく
「櫂だ、本物の櫂だ!」
「…スズか?」
「うん、ちゃんと覚えてたんだね?」
「当たり前だ」
ぽん、と頭に乗せられる手のひらは前よりも少し、大きくなっていた
背も、高くなっていた。…まぁ、レンもだけど
「スズ、お前小さくなったな」
「!なってない!!櫂が大きくなったんでしょ!」
上から私を見下ろしてくる櫂は、なんだか前より大人びて見えて少しだけ切ない気がした
私の知らない間に櫂は私より大人になったんだ…
「どうしたんだ、こんなところに」
緩やかな優しい笑みを浮かべながら、ゆっくりと私の髪を撫でる櫂の手が心地いい
「櫂に会いに来たの」
「…そうか」
櫂、櫂、櫂。
大好きな君に会うのを私はどれだけ我慢した?
今の君と記憶の中の君は、背格好は違えど変わっていなかったんだね
私に向けてくれる、優しい笑みはそのまま残っていたんだね
「あー、櫂、大好き!!」
櫂の背中に回す手に、更にぎゅうっと力を込める
「お、おい…」
困ってほんのり顔を赤くする櫂が可愛くて仕方ない。それでも離されない手が嬉しいの
私は今も昔も君が好き
―思い出と今
(昔と変わらず優しい君に)
20120128