『……』


放課後。
屋上の扉を開くと森山が1人真ん中にぽつんと立っていた。

さすが残念なイケメンだけあって、立ち姿が憎たらしいくらい絵になっていた。


『…森山』


呟くように名前を呼ぶと、森山はゆっくりと振り返って、こっちに来いとでも言うように手を動かす。

呼んだんだから森山の方が来るべきでしょ。そう思ったけれど言葉には出さずに素直に森山の方へと足を動かして、私が森山の目の前に立ったとき、森山は静かに口を開いた


「…オレはお前に嫌われるようなことをしたのか?」


その質問に驚いて思わず目を見開く。なんでそんなことを聞くの?


「……どうしてオレを避けるんだ」
『っ、』


やっぱりバレてたか。
毎日話していたのに、ぱったりと関わるのやめたのは不自然すぎたみたいだ。

森山は少し寂しそうな顔で私を見ている。


「お前がいないと誰もオレの話を聞いてくれない」
『……………』
「お前がいないと、つまらない」
『…………………』
「お前がいないと、調子が狂うんだ。」
『………………………』
「あの子といてもお前のことで頭がいっぱいで、あの子と別れた」
『…!』


あの子と別れた。
その森山の言葉が頭の中で反響する。
あぁ、どうしよう。嬉しい、だなんて。
いつから私はこんなに性格が悪くなった?


「なぁ、白月…オレ、お前が好きみたいだ」


バカじゃないの、そうやって前までなら笑い飛ばせたかもしれない。だけど、今。森山のことが好きだと自覚した私はどうするんだろう。

ついこの間笑い飛ばした筈の森山のキリッと引き締めてられた顔。でも今回は…少しだけかっこよく見えてしまった


『…私も好きだよ』


勝手に動いた口からはそんな言葉が紡がれていた。そして、私の目に映るのは驚いたような顔をした森山。


「…え、お前………」
『………なに?』
「これ、夢じゃないよな?」
『知らないよ。夢じゃないの?』
「…じゃあ、ちょっと抱き締めてみてもいいか?」
『……好きにすれば』


ふわりと私を包み込む森山の香り。
するり、と森山の背中に手を回せば、私を抱き締める森山の腕に力がこもった。

好きだよ、森山が。

惚れっぽくて、口説き文句が最悪で、女の子大好きで、残念なイケメンって呼ばれてる森山が

変わった立場。
仲のいい友達から恋人へ。
ただ、それだけなのにこれから君の傍にいるのは少しだけ照れ臭くなりそうだ。
そんなことを思いながら、もう一度『好き』と呟いた


20121017 完








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