「これが最後の恋になるかもしれない……!」
キリッと顔を引き締めてそう言った森山に私は笑いを堪えるのにだいぶ苦労した。
森山、彼を紹介するのはとても簡単だと思う。
「残念なイケメン」そして「女の子が大好きで惚れっぽい」もうこれだけで森山の説明はだいたい出来たと言っても過言ではないだろう。
道ですれ違う、試合でたまたま客席にいるのが目に入る。それだけで女の子に一目惚れできる森山の「最後の恋」発言。
余りの信憑性のなさに、私は軽くそれを受け流した。どうせ明日には他の子に惚れてるんだろうって思って。
「明日でついに1か月だ…!」
小さくガッツポーズを決めながらそう呟いた森山に、私は驚きすぎてポロリと食べようとしていた卵焼きを落としてしまった。…あぁ、もったいない
『……1か月って、前に言ってた最後の恋の人?』
半信半疑。
もしかしたら違う人かもしれない、そう思いながらも森山に問えば、「あぁ!」と森山は輝く笑顔で頷いた。
予想外、っちゃ予想外のその目を大きく見開いた。1週間持ったら奇跡の森山が1か月…、これはすごいってか怖いかもしれない
「今日、丁度部活が休みだから放課後デートをする予定なんだ」
『おぉ、頑張れ。へましないようにね』
「あぁ!必ず最高の1日にする!」
つきん、森山の嬉しそうな笑顔に何故か胸に何かが刺さったような痛みが走った。…小骨でも刺さったのかな
もう一度ウザいくらいにうきうきの森山を見ても、もう痛むことは無かった。
きっと、気のせいか。
森山のノロケを聞き流しながら、お弁当の残りを食べるべく箸を伸ばした。
20121016
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