『…はぁ、なんでこんな………』
ずっしりと肩にかかる重み、締め付けられるお腹。
肩にかかる重さは本当はそんなでもないのかもしれないけれど、昨日の今日。気が重い私にとってはとてつもなく重く感じる。
「さぁ、菜乃。そんな暗い顔してないでぐいぐい行ってきなさい!」
『はいはい』
「相手はイケメン!逃すんじゃないわよ?」
『善処しまーす』
慣れない着物を来て乗り気でないお見合い。そしてこのお見合いを勝手に組んだ叔母さんのテンション。
ほんと、最悪以外の何でもない。
お見合いじゃなかったら、こんな風なお店に来れるのは嬉しいのになぁ…。
気合い一杯鼻息荒い叔母さんについて歩いていく。そして叔母さんはある一室で立ち止まると、ものすごい笑顔と媚を売るような声で「失礼しますねー」と言って襖を開けた。
…入りたくないなぁ。
でもそれは叶わず叔母さんに背中を押されて、私は中に押し込まれた。
「それでは若いお二人でごゆっくり〜」
叔母さんはそう言うとにやにやしながら襖を閉めた。…ったく、本当に
そのまま立っていても何の意味も無い。そう思って相手の方に振り返った瞬間、私と相手は同時に声を上げた
「『え、えぇぇぇぇ!?!?』」
お互いにお互いを指さしあって固まる私たち。
なんでかってそんな…!
「ちょ、もしかしなくても菜乃!?」
『な、なんで高尾がここにいるの!?』
「それオレの台詞!まじ久しぶりじゃね?」
まさかの見合いの相手が知り合いだなんて、しかも昨日諦めたばかりの彼の高校の時の親友である高尾だなんて、予想外にもほどがある。
とりあえず落ち着くために座ると、高尾も前に座った。
「うわー、まさか嫌々来た見合いの相手が菜乃とか驚きだわ」
『私もだよ。見合いとか最悪だー。とか思ってたら相手がまさかの高尾』
「つまりはお互い無理矢理の見合いだったってわけ?」
『そーいうことみたいだね。』
「お互い苦労してんな」
途中来たお店の人が出してくれたお茶を飲みながら、2人で最近の身の回りの話や高校の時の思い出話に花を咲かせた。
でも、高校の時の話をすると言うことは必然的に彼の話題が出てくることになって……
「そう言えばお前見合いとかやって平気なのか?真ちゃんいるのによー」
その名前を聞いただけなのに、なんでか気分が沈んで悲しくなってくる。
でも、そんなこと悟られて久しぶりに会ったのに、高尾に気を使わせるの嫌だし…
『あぁ、真太郎くん、ねー…』
にこりと今までと変わらないように頑張って笑うと、高尾の表情が一瞬で変わった
「…真ちゃんと何かあったのか?」
辛いなら話してみ?隣に来て頭を撫でられて私は枷が外れたように泣き出してしまった。。
それから泣き止むまで優しく背中を撫でてくれる高尾の手に、これが真太郎くんだったらよかったのにって思う、ダメな自分に更に涙が溢れた。
20121014
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