―プルルルルル

無機質な音が鼓膜を振るわせる。

一回、二回、三回…。
何回かその音を聞いてから、私は電話を切った。また彼は電話に出なかった。


『…何やってんだろうなー、私。』


無意味とわかっているのに、それでも繰り返してしまうのは、やっぱりどこかで希望を持ってしまっているからなのかもしれない。

彼は迎えに来てくれるって心の隅で信じていたいからなのかもしれない

携帯を握り締めたままベッドへと勢いよく倒れ込む。


『"必ず迎えに行くから待っていろ"か…』


彼がそう告げて私の前から姿を消したのはもう5年前のこと。

時々来ていた連絡が途切れたのは3か月前。

そして、久しぶりに見た彼が知らない女の人と2人でいるのを見たのは1週間前。

それを見てどうしてか聞きたくて電話をしたのは3日前。

――そろそろ希望を捨てた方がいいのかもしれない


『明日の電話で、最後にしよう』


携帯を胸元で抱き締めて丸まる。

明日、明日。
もし電話に出てくれたなら―――……













そして翌日電話をかけた。

彼は出なかった。

その日、私は声を押し殺して泣いた。



20121013






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