「なほちんなんか、知らない」
ぷいっと顔を反らして、私から離れていく敦くんに、私はどうすればいいのかわからなくて、ただその場に立っていることしか出来なかった。
そして、敦くんのおっきな後ろ姿が見えなくなったあと、敦くんに言われた言葉の意味を理解して、じわっと目頭が熱くなってきた
(敦くんに、嫌われた…)
目頭は熱いのに、体はすぅっと冷えていく。
なんで、どうして?理由がわからない。私、自分が気がつかないうちに敦くんに何かしちゃったのかな
『…うっ、』
悲しくて、辛くて、頭がぐしゃぐしゃになる。少しずつ漏れ始める嗚咽。…だめ、泣いたらだめなのに、私が悪いから嫌われちゃったんだから泣く資格なんて私には無いのに…!
今は幸い、って言ってもいいのか周りに人はいない。屋上の壁に背中を預けてその場にずるずると座り込む。
そのまま声を殺して泣いた。わからない理由を何度も何度も考えて。
ばたん。
『!』
不意に扉の開く音がして、反射的に顔をあげる。誰、誰?誰が来たの…!?ぼやける視界の中見えたのは赤色と驚いたような表情。……赤司くん、だ。
「小里…?」
『っ』
顔を隠して急いで立ち上がる。こんなところ、見られるなんて…嫌だ!扉へと手を伸ばす。早く、早く屋上から出なくちゃ。そう思ったのに、
「小里、落ち着け。何があったのかオレに話してみろ」
その言葉と共に、あったかくて大きな手のひらが頭に乗せられたものだから、ぶわっとまた、涙が溢れた。