俺、頑張りますから
「菜音さん、菜音さんっ!」
後ろから名前を呼ばれて振り返ると、切原くんがちぎれんばかりに腕をぶんぶんと振りながら駆け寄ってくるのが見えた
足を止めて切原くんが来るのを待っていれば、切原くんは勢いよく私に抱きついてきた
『切原くん相変わらず元気いいみたいだね』
「菜音さんが見えたから急いで来たんスよ!」
えへへ、と少し照れたように笑いながら離れていく切原くんはなんか犬みたいで可愛い
『そうなんだ』
「菜音さん、俺明日試合なんですよ!だから応援来てもらえません?俺、菜音さんが応援してくれたらいつもより頑張れる気がするんスよ!」
『でも立海ならたくさん応援いるでしょ?』
「俺は、菜音さんに応援してほしいんッス!!」
あんまりにも切原くんは一生懸命言うから少し笑いそうになる。この年頃は本当に真っ直ぐ
『わかった。じゃあ応援しに行く』
「絶対ッスよ!あと、立海じゃなくて"俺"の応援して下さいね!!」
『はいはい』
「約束ッスよ?絶対来てくださいね!」
『行くよ』
「じゃあ、指切りしましょーよ!」
『はいはい』
差し出された小指と自分の小指を絡めてやる指切りは、なんだかすごく懐かしい
「『ゆーびきーりげんまん嘘ついたら針千本のーますっ!指きった!』」
お互い顔を見合わせて思わず吹き出す。
「菜音さん」
『ん?なに』
「俺、めっちゃ頑張ります!」
『うん、頑張れ』
指切りで更に気合いが入ったらしく切原くんは太陽みたいな笑顔を浮かべている。だから油断したのかもしれない
「だから菜音さん、明日の試合で俺が勝ったら俺と付き合って下さいね!」
『うん、…え?』
「俺、明日絶対勝ちますから!」
私が言葉の意味を理解する前に走り去っていってしまった切原くん。
ただ一人残されて言葉の意味を理解したころには切原くんの姿はどこにも見当たらなかった
『…マセガキめ』
最近の中学生は怖いわ。なーんて
明日の試合の結果を楽しみにしながら帰る私はなんやかんやで嬉しいみたいだ
明日、切原くんの太陽みたいな笑顔がまた見れますように
次の日の試合の後。
接戦の末に勝った赤也に改めて告白されるのはもう少し未来の話
俺、頑張りますから
(大好きな君の応援をください)
―――――――
赤也可愛いよね
20120803