紫原とお菓子







「なのちーん」


いきなり陰になった目の前と聞きなれた声に顔を上げると、今日も今日とて相も変わらずだるそうな紫原くんが私を見下ろしていた。

立っていてもかなりの身長差があるのに、今は私は床に座っているから、身長差はいつもより更にとんでもないことになっている。紫原くんの顔陰になってて見えないもの。


『どうしたの、紫原くん?』
「お腹減ったー…。なのちん甘いもの食べたい」


ぼふっ と言いながらこちらに倒れ込んでくる紫原くんをスマートに避けながら鞄の中身を思い出す。甘いもの、甘いもの、ねぇ……


「なのちんなんで避けんの?ひどくねー?」


ぷくーっと頬を膨らませながら不満を溢す紫原くんは正直小さい子にしか見えない。体はこんなに大きいのに不思議なものだ。可愛いったらありゃしない

でもまぁそれは紫原くんを避けない理由にはならない。体があんなに大きいんだからあのまま私が紫原くんを受け止めてたりしたら私は間違いなく壁と紫原くんの間でお陀仏になるからね。


「なのちんのバーカ。もうしんねーし」


避けられたことが余程気に入らなかったらしい。
紫原くんは ぷいっ と顔を私とは反対方向に向けると、その場に座り込んでもぐもぐとまいう棒を食べ始めた。
お菓子持ってるくせにお菓子集りに来るとは…、紫原くんは本当にお菓子大好きっ子なんだから。


『ねぇ、紫原くん』
「……………。」


話しかけると紫原くんは ちらっ と一瞬だけこっちを見て、あからさまに ぷいっ と顔をそらす。
本当、拗ねた子供を相手にしてるような気分になる。


『今日ね、おやつに蜂蜜いーっぱいかけたホットケーキを焼こうと思ってるんだけど……』


ぴくっ とわかりやすく反応する紫原くんの肩。でもまだ振り返ろうとはしない。…じゃあ、


『あー、バニラアイスをのせるのも美味しそうかもなー?』
「……………」


ガリッ と飴を噛み砕く音
その次に来るのはずっしりとしたあたたかさ。


『だからさ、知らないなんて言わないでよ?』
「お菓子で釣るとかなのちんずるいし」


ぎゅーっと、抱きついてくる紫原くんの腕をぎゅっと抱き締める


『そーだね、じゃあ…お菓子関係以外で何か一つわがまま聞いてあげる』
「……じゃあ明日はずっと抱き着かせて」
『…はーい、』


肩に顎をのせて、甘えるように擦り寄ってくる紫原くん。くすぐったさに身を捩ればまるで離さないとばかりに紫原くんは抱き締める力を強くしてきた


「なのちん」
『ん?』
「ホットケーキ、楽しみにしてる」
『…美味しいの作るね!』




20121103
――――――
オチ考えてなかった

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