赤司と映画を見る






『征くん、一緒に映画見ませんか?』


にっこり、笑顔を浮かべる菜音が手に持っていたのは最近話題になっている映画のDVDだった。そういえば見たいとかなんとか菜音が言っていたのは記憶に新しい。


「いいよ。おいで」


扉を押さえ入るように促すと菜音は『お邪魔します』と言って家の中へと入ってきた。
うん。ちゃんと靴も揃えたね。教え込んだ甲斐がある。


『なんだか征くんの家久しぶりに来た感じがする。おー、征くん家の匂い!』
「実際うちに来るのは久しぶりだろう。あと、匂いを嗅ぐな犬かお前は」
『あはは、つい。ご無沙汰してたもので』


にやにや、だらしなく表情を緩める菜音を部屋へと案内する。菜音は居間や客室に案内してやっても僕の部屋に行きたがるのだから最初から部屋に案内してしまった方が早い。


「飲み物を持ってくるから用意しておけ」
『はーい』


間延びした返事をした菜音を横目でちらりと見た後、お茶を用意するために台所へと向かう。最近いい茶葉が手に入ったからそれを使おう。

手早くお茶を用意して部屋に戻れば、菜音が待ってましたと言わんばかりにテレビの前に座り込んでいた。


『征くんおかえりー。じゃあ再生するよ?』
「あぁ。」


菜音にお茶を渡し、僕も片手にお茶を持って菜音の隣に腰を下ろす。
僕が座ったのを見て菜音がDVDを再生すると、目を細めたくなるような眩しい青空が画面いっぱいに広がった――――








『……泣いた。』
「お前の顔を見ればわかるよ」


未だにぼろぼろと涙を流す菜音の顔をぐいっと指で拭うのはこれで何度目か。

菜音はすぐに感情移入するから、こうして泣くことはよくある。そのたびに僕がこうしていつも涙を拭ってやってきた。昔から。


『ねぇ、征くん…』
「なんだい?」
『…私と征くんは、映画の中の2人みたいに離ればなれになったりしないよね…?』


菜音の涙で濡れた手のひらを、ぎゅっと握り締めながら菜音はそう問いながら僕の顔を覗き込んできた。

瞳の中に見える不安の色。空いている方の手でそっと頭を撫でてやれば、菜音は僕の手を握る力を強くした。全くこいつは手がかかる


「大丈夫だ。僕はお前を離さないから。お前は安心して僕の隣にいればいい」


約束しただろう?
そう返せば菜音は涙で濡れた顔を嬉しそうに緩めた。




20121025

―――――
赤司と幼馴染みの話




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