紫原と10月9日





今日は、何か変だ。

朝、学校へ行こうとしたら、なのちんが「おはよう」って玄関の前に立っていた。ちょっとびっくりさたけど「おはよ」って返した。

なのちんはオレの手をぎゅってして、「一緒に学校行こう」って、嬉しくて頷いたら、なのちんも優しく笑ってくれた

学校についたら、クラスが違うなのちんとは離ればなれになっちゃう。

なのちんの手を離したくなくて、ぎゅってしてたらなのちんがちょっと考えるような仕草をしたあと「敦はどこに行きたい?」って聞いてきたから「なのちんと一緒ならどこでも」って答えた。

なのちんは少し驚いたように大きい目をまんまるくしてそこにオレを映した。そんで、「じゃあ今日は学校終わったあと、駄菓子屋さん巡りをしようか」って笑った。だからなのちんを一回ぎゅってしてから、教室に行った

なのちんは休みじかんごとに会いに来てくれた。みんながオレに誕生日おめでとうってお菓子をくれるのを横でにこにこしながら見てた。

いつもはオレがなのちんに会いに行くのに、なのちんがオレに会いに来てて少し変な感じがした。

そして放課後。
なのちんが迎えに来てくれた。で、なのちんと手を繋いで駄菓子屋巡りした。まいう棒の新作見つかって嬉しかった。


『うわ、結構楽しんだね』
「そだねー」


気付いたら空は夕陽でオレンジ色になっていた。あぁ、もう帰んなくちゃいけないんだ


「なのちん。」
『ん?』
「帰りたくない」
『だめ』


繋いだ手はそのまんまで、オレは後ろからなのちんを抱き締めた。今日はオレの誕生日なんだよ?ワガママ聞いてくれてもいーじゃん


『ねぇ、敦』
「なに」
『敦はなにが欲しい?』


オレの腕の中でなのちんはくるっと回ると、オレと正面から向き合った。変わらずにこにこしてるその顔からはなにもわからない


『今日は敦の誕生日だからね。敦の望むものならなんでもあげる』


するっと絡む指。
なのちんはひどい。
今日くらいなのちんからくれればいいのに。


「…お菓子よりも、おめでとうよりも、なのちんがいい」
『充分独り占めしたじゃない?』
「まだ足りない。いくらなのちんがオレに時間くれたって足りないよ」


お菓子よりも、おめでとうよりも、なのちんがいい。だけどいくらなのちんがオレに時間をくれて傍にいてくれても、足りない。ぎゅうって抱き締めたらなのちんは少し恥ずかしそうに笑って、背伸びしてオレのほっぺにキスをした


『じゃあ、ベタだけど私をあげる』
「じゃあベタに、なのちん貰う」


なのちんをさっきよりもずっとずっとさっきよりも強く抱き締めて、なのちんの唇に噛みついた。


『敦。誕生日、おめでとう』
「ありがとー」



あるひのはなし

20121009
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むっくんハピバ!

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