求める紫原
「なのちん」
ギシリ
ベッドのスプリングが鳴る。もう後ろは壁後がない。お気に入りの玩具を見つけた子供みたいに目を輝かせながら近付いてくる敦から、もう逃げ場がなくなっていた。
『ど、どうしたの?敦』
余裕があるフリをして、にっこりと敦に笑いかける。でも頭の中は大混乱。さて、どうやってこの状況を抜け出そうか
すっ と伸びてきた敦の手に肩が小さく揺れた。そしてその手は私の頬をなぞるように撫でた
『あつ、んっ』
敦の手は私の後頭部を押さえ込み、そのままぐいっと引き寄せられてろくに抵抗もできないまま、私と敦の唇は重なった
くっついて、離れて、またくっついて、離れる。そんな軽い口付けを何度も交じ合わす
『ん、ふ…っ!』
体の向きを変えられてそっと肩を押されると、背中には柔らかいスプリングの感触、視界に入るのは天井と敦だけになった。まずい、まずい、頭の中で危険信号が鳴り響く。
「なのちん、甘い…」
『ちょっ、待って!』
再び近付いてくる敦の顔。やばい、これは本当にダメすぎる。迫ってくる敦を止めるために、敦の肩を押せば敦は不満げに唇をつきだした。
「なに?なのちんでも邪魔すると怒るよ」
『いや敦、とりあえず落ち着いて?』
「やだ」
『待っ…!』
抵抗する腕を一纏めにされて頭の上で押し付けられる。そして再び重なる唇。さっきまでとは違うのは にゅるり と生暖かい敦の舌が入ってきたこと
嫌だ、嫌だと首を振っても全く離れてくる気はないらしく、むしろどんどんと深くなっていく、好き勝手に口内で暴れまわる敦の舌。本当にコイツは子供みたいに加減を知らないのだから困る
「あっまー。なのちん、何でそんなに甘いの?」
『っ、知らんわ。とりあえず離して』
「ここも柔らかいしマシュマロみたいだねー。なのちんお菓子で出来てんの?」
『ん、なわけあるか!』
するすると体を這い回り始める敦の手。あろうことか人の胸を鷲掴みにしてマシュマロみたいだなんて、本当にこいつはどうかしてる!
「なのちん、全部食べてもいいよね」
人の返事など聞く気は全くなかったらしく、敦はまた私に口付けて口内で好き勝手に暴れだす。
(あぁ、これはもう無理だ…)
こんなスイッチの入った敦。私じゃ止めることなんてできない。私が諦めて力を抜くと敦は満足そうに笑った
甘い、甘い、甘い
20121008
―――――
うわぉ