後悔する赤司
「もう僕に付きまとわないでくれ」
そう突き放したとき、菜音は「ごめんね」って泣きそうな顔をして笑っていた
***
菜音を突き放してから僕の日常は変わった。どこに行ってもひょこひょこ後ろをついて回っていたその姿は無くなって。
「赤司くん」って鬱陶しく僕の名前を呼ぶ声も聞こえなくて、「今日は夕陽がすごく綺麗だね!」とか言いながら馬鹿みたいな笑顔も無くて
うるさくて迷惑だったから、突き放して、これでよかった筈なのに
今になって菜音の姿が浮かんで、消えてを繰り返して、突き放す前よりも鬱陶しくなっていた
(本当に嫌な奴だよ)
ずきずきと痛む胸を押さえながら思う。たまたま町中で見かけた菜音は僕の傍にいたときと変わらず笑っていて、ただ変わったのはその隣に僕のじゃない奴がいたことぐらいで
それがどうしても許せなくて、八つ当たりに菜音に近付いて罵った。
菜音が泣きそうな顔をするのに苛ついて、その頬を張って、「お前がいなくなってくれて本当によかった」なんて嘘吐いて。
逃げるように家に帰ってきて、泣きそうになっているなんて。
今になって菜音の笑顔が、菜音のことが好きだなんて気付くなんて、傷付けたくせに会いたいなんて、戻ってきて欲しいなんて、
「僕は本当に嫌な奴だ…」
部屋の隅、膝を抱えてあの日君を突き放さなかった未来を想像するくらい、君は許してくれるだろうか
もしその手を離さなかったなら
(未来の君も僕の隣で笑ってた?)
20121007
―――――
突発で。
書きながら泣くとか末期かもしれん。