怖かった、怖かった。
その全てを見透かすような眼が、甘ったるくそのくせ強い束縛の言葉を紡ぐ唇が。私に触れるその手が、あなた自身が。
だから、逃げたのに――
「やぁ、久しぶりだね」
目の前、嬉しそうに細められる左右色の違う眼を前にして、私は動くことが出来ないでいた。そう、これはまるで蛇に睨まれた蛙、というやつだろう
「元気だった、みたいだね。安心したよ」
一歩一歩、ゆっくりと近付いてくる赤司。逃げたいのに、怯みきった私の体は言うことを聞いてくれなくて、あっという間に私の体は壁と赤司の間へと追いやられていた
「ずっと心配していたんだよ。お前のこと」
するりと頬撫でる手に体が強張る。
「もう何も考えるな。大人しく俺について洛山においで」
『…っ、』
ぼろぼろ、と何故か溢れ出す涙。頬を撫でていた手はゆるりと私の首にかかった。
「さぁ、お前はどうしたい?」
そう言って赤司は私に顔を近付けると私の頬を流れる涙をべろりと舐めあげた
そして、私は―――…
頷いた。
再びとらわれた
(きっともう逃げられない)
20121004