初恋メランコリィ






『いきなり全力疾走したあとみたいに心臓がばくばくしたり、なんかイライラしたり、いきなり胸が締め付けられるようになって息苦しくなることがあるんだけど、これって病気だよね?』


真面目な顔でそう話した神原を前に、俺はどう答えてやろうかと考えた。

素直に「それは恋だ」と言えたらどれだけ楽だろうか。だが相手はあの神原だ。通じるわけがない。神原の場合「恋を知っているか」と尋ねれば、『知ってるよ!魚でしょ!』と答える確率100%だ

さて、どうしたものか


『柳?』


黙り込んだ俺を不思議に思ったのか、神原は俺の顔を覗き込んできた。…仕方ない、時間がかかってもいい、か


「…神原。」
『なに?』
「その苛々や息苦しさが起こるとき、傍に誰かいたりしないか?」
『……あー、いる』
「そうか。そいつと接するとき、お前はどう感じる?」
『んー、楽しい、かな』
「それでは、そいつがお前以外と親しげに接しているのを見たときはどう感じる?」
『イライラする、』


俺の質問に対して、何故そんなことを聞くのだろう、と言うような顔をしながらも神原は一つ一つ答えていく。

答えを聞く限り、やはり神原の病の名は「恋」以外ないようだ


「お前はそいつのことが好きか、嫌いか?」
『えーっと……、す、好きかな』
「そういうことだ。今の気持ちを相手に伝えてくればいい」
『?なんで』
「お前はそいつに"恋"をしているんだ。」
『う、え…!?』


ぼんっと効果音のつきそうな勢いで一気に赤く染まった神原の顔。…流石に恋、くらいは知っていたのか


「ほら、行ってこい」


背中を押して、好きな相手の元に向かう後押しをしてやる。神原は基本真っ直ぐな奴だから、覚悟を決めたらすぐにでも相手の元へと走っていくのだろう


『や、柳…!』
「どうした」


なぜか焦ったように振り返った神原に、多少の疑問を持ちつつも、神原の行動を待った


『柳あのさ、さっき話したの、柳とのことだって言ったら困る…?』
「…なっ」
『私、柳が好き、みたいです…』


俺のYシャツの裾を少しだけ掴んで俯くその姿に、小さく笑みが溢れた。俺は大きな勘違いをしていたようだ


「神原」
『…なに……?』
「俺も、好きだ」


勢いよく飛び付いてきたその俺よりずっと小さいその体を抱き締めた



初恋メランコリィ
(憂鬱なんて君への想いで吹き飛ばす)


――――――
初柳夢
ブン太の予定で書いてたけど途中で変更した裏話()

20120820

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