「…朔也、」
不意に服の裾を引かれ、軽くバランス崩す。だがしかし、流石俺。転ぶとか無様な姿は晒しません。
俺の服の裾を引っ張った張本人、振り返ればそいつはじっと俺を見上げていた
「どうした、カルタ?」
「あのね、買い物付き合って欲しい…」
こて、と首を傾げながらそう言うカルタ。うん、俺が卍里だったら顔真っ赤にしてるところだな
「あぁ、いいよ。お安いご用さ」
にこっと笑いかければ、カルタもほんの少し空気を柔らかくして笑った
「って、ことだから。双熾と凛々蝶じゃあなー」
「はい、それではまた妖館で」
「ふん、せいぜい二人で楽しむがいい」
ひらひらー、っと帰っていく二人に手を振ったあとカルタと二人の行った方向とは逆の方に向けて足を動かす
さぁ、買い物へいざ行かん!ってな〜
***
「んで、カルタはなにを買いたいんだ」
「…お菓子」
「了解」
あちらこちらから甘い香りの漂うデパートのお菓子専門のフロア
右を見れば高級チョコ、左を見ればケーキ……横にはひたすら試食をするカルタ
見てるこっちが甘さにやられそうになる
「朔也、あーん…」
「んー?あーん」
反射的に口を開けば口に放り込まれる甘さ。ふわりと、甘い香りが抜けていく
「…美味しい?」
「ん、んまい」
小首を傾げながら俺の顔をうかがってくるカルタ。可愛い。卍里が失神するくらいにはな
カルタは俺の返事に満足そうに微笑むと、俺が試食したらしいお菓子の箱を手に取った
「じゃあ、これにする…」
「そーかそーか。んじゃあそれ貸せ」
カルタの手から箱を取り、レジに向かう
…おぉ、なかなかのお値段、だな
「ほい、んじゃ帰るか」
ほら、手を差し出せば重なるカルタの小さな手
「…朔也」
「んー?」
「帰ったら、一緒にお菓子食べよう…?」
「喜んで。とびきりの紅茶淹れてやるよ」