「俺と仕事、どっちが大切なの!?」
この台詞普通は女の方が
言うんじゃ無いでしょうか
目の前にいる臨也は腕を組んで、仁王立ちしながらぷぅ、と頬を膨らませている
どうしてだろう
いつもの十倍増しでうざい
「折角二人きりなのにさ、ずーっと、パソコンカタカタカタカタ…!俺は今日と言う日が待ち遠しくて一週間前からナニしようか楽しみにしてたのに…!」
「へぇ、そう」
ぎゃいぎゃい玩具をねだる子供みたいに騒ぐ臨也
はっきり言って仕事の邪魔
「ねぇ、本当に菜音は
仕事と俺、どっちが大切なの!?」
詰め寄ってくる臨也の影で画面がよく見えなくなる
軽く、イラッ☆と
顔を画面からずらして顔を上げる
垂れ下がってきた前髪をかきあげて
臨也を軽く睨み付ける
「…選んでいいの?なら、し、んぐっ…!」
「ちょっと、待って!」
言われた通りに選ぼうとすれば
いきなり塞がれる口。
地味に、息できな…!
「やっぱ言わないで、菜音絶対"仕事"って言いそうだから」
私の口を手で塞いだまま
今度は喚き出す。
てか、それより手を退けて!
空いてる両手で、臨也の手を
引き剥がそうとするけど
いくら細くても臨也は男
力を込めて引っ張っても離れない
「菜音が俺より
仕事選ぶなんて嫌だ!」
いや、今は仕事とかじゃなくて
生死の選択になってんだけど!
「んー!んんんっ!!んんー!」
半ばやけくそになって
臨也の腕を強く掴んだまま足をばたつかせての抵抗を試みる
「…!俺がそんなに嫌いなの!?…やだ、菜音のことは離したりしてあげない!」
離したりしてあげない=
このまま息できない=私さよなら!?
「んんんー!」
臨也ー!、と言葉にならない言葉のままに叫ぶ。
今の状態に気付けバカァァァ!!
「え、なに?…あぁ!?菜音っ!?」
ぱっと離された手、一気に酸素が体内に流れ込む
「…けほっ、ばが、いざや…!あの世を選択するとこだった…!」
「ごめん…」
一気にしゅーん、と静かになる臨也…全く
座り込む臨也の傍にいって、私もその横に腰を下ろす
「…っで、さっきの質問の答えね」
「え、言わな」
俯かせていた顔をあげて口を開いた臨也の言葉を無視して私は言葉を吐き出した
「臨也に決まってるでしょ」
「…俺?」
「当たり前。臨也のが大切」
「…、菜音っ!」
飛びかかってきた、臨也を受け止めきれずそのまま背中から床に倒れ込む
なんだか嬉しそうな臨也を見ながら
やっぱり仕事、と言わなくて
よかったと思った
―何度でもこの選択を
◎JUKE BOX.様