ふわり、ふわり。

今年初めての白い雪が空から落ちてきた日、君は俺にこう言った。


「―留学、することになったんだ」

「えっ?」


その言葉を聞いた瞬間周りの音はすべて遮断され、世界には俺と君しかいなくなる


「…どういう、こと?」


震えそうになる声を、必死に絞り出して出た言葉は、あまりにも頼りない情けないもので、菜音の言葉と自分にどうしようもなく悲しくなった


「ずっと考えてたんだ。それで決めたの、留学するって」


そうはにかんだ菜音の笑顔もどこか泣きそうになっているような気がして――…

そして気付く。菜音もまだ迷いがあることに。一人で見知らぬところにいくのなんて誰だって不安になるんだから

小さい頃なら行かないでと、止めたけれどもう違う。例え泣きそうだって菜音は行くと決めたんだから、俺は応援するしかない


「菜音、いってらっしゃい」

「〜っ、臨也…」


小さな小さな体を抱き締めて、彼女が前に進めるように言葉をかける

行かないで、行かせたくない、心がそう叫ぶ


「頑張ってくるんだよ。菜音は馬鹿なんだから」

「馬鹿じゃないし、馬鹿関係無いし」


我慢する、我慢するから、帰ってくるまで待っているから、だからお願い。

今このときだけは、このままこの温もりを抱き締めさせて


―さよなら、またね

(君が戻るその日まで待ち続けるよ)