それはほんの少しの好奇心。


「ねぇ、お兄ちゃん」

「なに?菜音?抱き締めて欲しいって?ほら、お兄ちゃんの胸に飛び込んでおいで」

「んなこと言ってねーから。」


相変わらず人の話を聞かずに突っ走るお兄ちゃんにはため息がもれる…、まぁいいや。それよりも今日は目的があるんだよね


「お兄ちゃん、聞いてくれる?」

「何?」

「あのね……」


すぅ、と息を深く吸い込んでから私はとびきりの笑顔で言葉を放った


「私、彼氏出来たんだ」

「…はっ?」


ピシリッ、空気が固まった、気がした。


「菜音…、誰それ?」

「へっ?」

「彼氏は誰だって言ってるの?」

「え、いや、その…」


なんかヤバイ。お兄ちゃんの顔、般若みたいなんだけど。なんか禍々しいものが背後に見えるんだけど?


「さぁ、その菜音をたぶらかした虫を潰しに行こうか」

「あのー、お兄ちゃん?」

「大丈夫だよ菜音。俺がすぐに助けてあげるからね」


声をかければ一変してお兄ちゃんは爽やか笑顔になる。普通の女の子ならころっとおちるような笑顔なのにどうしてだろう。恐怖しか感じられないんですけど


「菜音、お兄ちゃんにその"彼氏"という名の塵を紹介してくれるかな?」


―彼氏出来ました

(今更嘘とか言ったら死ぬのかな?)