パラリと本を捲る音とパソコンを弄る音だけが響く部屋で、臨也が痺れを切らしたように口を開いた
「ねぇ、菜音」
「んー、なに」
私は手元の本から目を離さずに返事をする。いまかなりいいところ。スコッチーとエッグの感動の再会。スコッチエッグ誕生の瞬間
「菜音、こっち来て」
「めんどくさいからやだ」
今いいところだから静かにしてよ、いいところだから。三回言っちゃうくらいいいところなんだよ、分かる?あ、今ので四回目かな
「じゃあ、今日一緒にお風呂入ってくれるんだね」
「なんでそうなる」
「寂しがりなうさぎさんな俺を無視するからだよ」
「うなぎさん?…臨也は魚になりたいお年頃?」
「違うから、うさぎだから」
話の流れがわかんない。臨也がうさぎさんとかありえない。シズちゃんがバーテン服とメイド服間違えるくらいありえない。…あれ、これはありえるかも
「菜音」
「はいはい」
早く早くと催促し、じだばたし出した臨也。お前は何歳児だよ。それにいい大人がしても可愛くないよ。
「菜音、来てよ」
「わかったから、ちょっと待ちなさいな」
読んでいた本を置いて臨也に近付き広げられている両手の中へと飛び込む。「ぐぇっ」と声を漏らす臨也。ごめん肘が鳩尾に行っちゃったみたい☆てへっ
「…菜音はやることが地味にひどいんだよねぇ」
「可愛い子供の悪戯レベルだよ」
全く自分で呼んだくせによく言うわ。この子は本当に、もう。肩に顎乗せてかくかくするぞこらぁ
「やめてよ、肩に顎乗せてかくかくするの」
「…!なんでバレた」
「バレたって…現在進行形でやってるじゃない」
「あらやだ本当」
かくかくをやめると、背中に回ってくる臨也の腕。そのままぎゅっと抱き締められる
「菜音いい匂いするよね、柔らかいし」
「柔らかくて、いい匂いって…、調理された肉とでもいいたいんですか」
「捉え方可笑しいから、それ」
「じゃあ臨也はいい匂いして固い。例えるなら…木みたいな」
「少しも嬉しくないよね」
「ふーん」
臨也の背中に手を回して抱き締め返せばふんわりと香る臨也の匂い。意外と落ち着く
ゆったりと頭を撫でてくれる臨也の手を感じながら私は目を閉じた
「…菜音?」
すー、すー、と小さく寝息をたて始めた菜音に臨也は小さく笑いを溢すと、自身も目を閉じた
―戯れ合い後