ありったけの勇気を振り絞った俺の誘いは、呆気なく断れた。
すでに日曜日には予定が入っている、との理由で
軽く落ち込みかけたが、それはすぐに元通り、いや元通り以上になった
なぜならば……
――…
「折原くん、ごめんね。遅くなっちゃった」
「大丈夫です。俺も今来たところなんで」
昨日断られた後、俺は神原先輩にお昼に誘われた。一緒に食べよう、と
場所はベタだけれど、心地よい風の吹き抜ける屋上。
いつもなら放課後の茜色の図書室でしか会えない彼女に、こんなに早く会えるだなんて嬉しくて仕方ない
ほかにも、俺を喜ばせる理由がある、それは…
「折原くん、はい。お口に合うかもわからないし、味の保障も無いけど…」
神原先輩の手作りのお弁当を食べられる、ということ
お弁当を受け取って、蓋を開ければそこには色とりどりのおかずが並んでいた。どれもこれも美味しそう
「いただきます…」
「どうぞ。召し上がれ」
おかずをひとつ口へと運ぶ。
「…美味しい」
「そっか、よかった。」
気づかぬ内にもれた感想は、しっかり神原先輩の耳へと届いていたようで、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ私も。いただきます」
彼女の隣に座って、彼女の作ったお弁当を彼女と一緒に食べる
それだけのことだったのに、俺は今までで一番と言えるくらいの幸せな時間のように感じていた