とくり、とくり

一定だった筈のリズムを崩し、突然早く脈打ち始める心臓。

普通なら気分が悪くなるはずなのに、不思議と心地よく感じるそれ。

この感覚を知ったのは、きっと神原先輩に初めて会ってから

何なんだろうこの感覚は愉快?優越?どれも違う。名前もわからない感覚。

人が好きで、人のことならほとんどのことを知っていると思っていたのに、この感覚は全く検討もつかないものだった


「折原君、」

「なに、新羅」

「それってつまりさ…」


折原君が神原先輩のことが好きってことでしょ?
新羅の言っている意味がわからなかった


「―はっ?」

「折原君は神原先輩といるとどきどきして、でも幸せで一緒にいたいと思ってるんだろう?先輩といると胸を締め付けられるような感覚はしないかい?」

「…するけど、」

「なら恋だね、恋。折原君は神原先輩に恋をしているんだよ」


すとん、新羅の言葉が胸の中に落ちた

恋?俺が神原先輩のことが好き?


「そうなんだ…」

「あぁ、」


どこかそのことに気付いていた自分がいた。気づかないでいたかった自分がいた。