「神原先輩」

「あ、折原くん…いらっしゃい。」


ふわり、と笑う彼女。

初めて話したあの日から俺は放課後の図書室に通うようになった。

彼女に会うといつもきゅう、と胸を締め付けられる感覚がする

だけど、それは嫌じゃなくて逆に幸せなような気さえしてしまう

ただ、神原先輩と二人きりで話をする放課後の時間が俺の中で今一番好きなことかも知れない

そんな風に思うようになってしまうくらい、俺は彼女に強い興味を持ってしまっていた


「折原くん」

「なに?神原先輩」

「私、折原くんの笑顔好き…。なんだか優しい」


悪戯っ子みたいな顔もなかなかいいと思うけどね、ぱらりと本を捲りながら先輩はまた笑った

優しい笑顔。自慢じゃないけどそんなことを言われたことなんて無かった

もしかしたら覚えてないだけなのかもしれないけれど。


「神原先輩。」

「?なぁに、折原くん」

「…やっぱ何でもないです。」

「変な折原くん」


栞を挟んで本を閉じる。
じゃあ、いつも通りに楽しくお話ししましょうか?、先輩の言葉に従って静かに椅子に腰をおろした

ねぇ、先輩。
貴女が好きな俺の笑顔はきっと貴女が作り出しているんだよ

そんな言葉が頭の片隅にぽつりとあった。