昨日と同じ図書室の一番奥にあるテーブル。そこで彼女もまた昨日と同じように眠っていた

正面の椅子に腰掛けて、彼女を眺めてみる

閉じられた瞳はなかなか開きそうに無い。さらさらと流れる艶やかな髪、陶器のようにつるりとした綺麗な白い肌

触れてみたい、本能がそう疼く。

無意識に手を伸ばす、だけれどそれはまた届かなかった

小さな声とともに彼女が目を覚ましたから。


「…、君は昨日の…?」


まだ覚醒しきっていないとろんとした瞳に捕らえられる。声が出なかった、まるで出し方を忘れてしまったかのように。俺はただ首を縦に振ることしか出来なかった


「…そっか」


彼女はふわりと微笑んでそっと俺の手に触れた。その部分だけが何故か熱を帯びる


「私、菜音。神原菜音…」

「折原、臨也…」


声を振り絞るようにして、自分の名前を口にする。名前を言うのってこんなに難しいことだったのだろうか…


「折原臨也くん…、」


臨也くん。彼女がただ復唱しただけなのにその音が特別なものに変わる


「ねぇ、私の話し相手になってくれる…?」


ゆっくりと差し出された手。それを自分の手で包み込んだ