あの日から俺は図書室に行かなくなった。一日、一週間時間が過ぎればきっと先輩のことなんて忘れられる

そう思っていたのに、時間が過ぎれば過ぎるほど、ずきずきと俺の中の何かが痛みを大きくしていった


(―神原先輩、何してるんだろ…)


気が付けばそんなことばかり、忘れようと人間観察をしていてもなかなか集中が出来なくて…、もどかしくて苛立った

そして、その苛立ちはシズちゃんへの嫌がらせでなんとか発散させていた

今日はシズちゃんのもとにそこらへんの不良どもを差し向けて、その圧倒的過ぎてつまらない喧嘩を眺めていた時だった。無駄に上機嫌な新羅が教室にやって来たのは


「やぁ、折原君!」

「…なんだよ」

「さっきまで図書室に行っていたんだけどね、そこでとても綺麗な先輩に会ったんだ」

「綺麗な、先輩…?」

「そう!正に容姿端麗とは彼女のためにある言葉だと私は思うね。まぁ僕の好きな人には負けるけど」


図書室、綺麗な先輩…、その言葉に当てはまるのはどう考えたって神原先輩以外思い浮かばなかった

「だけれど彼女なんだか寂しそうだったんだ。理由を聞いてみたらね、」

「……」

「"大好きな人に嫌われちゃったんだ"って。つい一週間くらい前までは毎日来ていたのに急に来なくなっちゃったんだって言っていたよ」

「―!」


気が付いたら走り出していた。図書室に向かって、先輩に会うために