目の前には顔も名前も知らない女の子が、顔を真っ赤にしながら立っている

ちなみに場所は屋上。有りがちなシチュエーション。予想が出来る展開だ。


「あ、あの…折原君!」

「なに?」

「あ、あたし…折原君のことが好きです!付き合って下さい!!」


そして真っ赤な顔を俯かせる。…つまらないなぁ


「ありがとう」


微笑みながらそう言えば、目の前の女の子は期待に満ち溢れた表情で俺を見つめる

…可哀想だなぁ、笑みを崩さないままにそう思った


「でも、君タイプじゃないからさ。ごめん、帰ってくれる」


バイバイ。手を振れば女の子はみるみる瞳に涙をためて屋上から出ていった

もう、あの子との関わりは0。顔も声も全部忘れたから。興味が無いことなんて覚えてられない

空を見ながら、ふぅと息を吐いた


「わー、臨也また告白されたんだね」

「…菜音」


ひょいっと、物影から出てきた菜音は、へらりと笑って俺の隣に立つ

そして俺を笑顔で見上げる。とくり、心臓が脈打った


「臨也はさー、いつも告白断ってるけど好きな人でもいるの」


菜音だよ、なんて例え言えたって「嘘だー」って軽く返されるのは分かってる

だから「菜音がもっと俺をよく見てたら分かるよ」って返すんだ。

だって君が俺を見たら必然的にいつだって目が合うようになるんだから


「わかった。臨也の好きな人を知るために私は頑張るよ」


悪戯っ子のような笑顔で小さくガッツポーズをする菜音に、俺は「せいぜい頑張るといいさ」と苦笑いを浮かべた


―いい加減気付いてよ

いつだって、
視線の先は君だけなんだから