「はい、怪我したとこ出してー」
「はい。」
言われた通りに軽く血の滲んだ腕を出しながら、臨也は密かに口端を吊り上げた。
(…さぁて、菜音に何してあげようかなー?)
ぐるりと保健室を見渡した臨也の目にあるものが止まった。臨也はそれに口端をさらにニィと上げると、菜音の腕を引き自分の腕の中へと引き寄せた
「?どうしたの、静雄?」
菜音の口にした名前に臨也は笑う。
(まだ、気付いてないみたいだね…)
臨也は不思議そうな表情の菜音に、軽い調子でこう言った。
「ねぇ菜音。ちゅーしよっか」
「はっ?」
驚いて固まる菜音の背中に手を回し離れられないようにガードする。ゆっくりと顔を近付けていけば、菜音はぎゅっとキツく目を閉じた
それを確認した臨也は先程見つけたあるもの…―マジックを手に取ると、キュッキュッと音を立てながら、菜音の額に『臨也ラブ』と落書きをした。
「よーし、完成♪」
「んぇ?」
「何、期待したの?」
「するか!」
「へぇ?のわりには顔赤いけど?」
「う、うるさい!」
みるみるうちに顔を真っ赤に明らかに焦り出す菜音は臨也は我慢できずに吹き出す。それを見て菜音はますます赤くなる
「そんなに笑わないでよ!てか静雄をなんか変!」
「そんなこと言われたって、ねぇ?」
「ふざけんじゃねぇぞ…」
「「え?」」
けらけら笑う臨也の後ろから聞こえてきたのは唸るような低い声。振り返れば鬼の形相の静雄。
「え、ちょっ、臨也顔が…」
「誰が臨也だあ゙ぁ゙!?」
「えっ、だから臨也が臨也じゃん」
「ノミ蟲と一緒にすんじゃねぇ!!」
「え、だってノミ蟲じゃんか」
「なになにー?イザヤ君?自分のことノミ蟲とか言い出しちゃってどうしたのー?」
「黙れイザヤァァァア!」
「えぇぇぇえ!?」
「うわ、こっわ」
もはや保健室と菜音の脳内はパニック状態。自分に黙れと叫ぶ臨也に、臨也の攻撃を避けるため菜音を盾にする静雄。
姿は変わらないのに中身がごちゃごちゃな二人に、菜音は煙をあげてぶっ倒れた。
―白昼夢パニック
(っていう夢を見たって話)