「はい、なおたん」

「ありがとうございます」


こぽぽぽ、と音を立ててカップに注がれた紅茶からいい香りがただよう

少しのお菓子も用意されていて、例えるならちょっとしたお茶会、みたいな感じ。


「ねぇ、なおたん」

「はい、何でしょう?」


ふぅ、と紅茶を冷まして一口飲めば、優しい味が口内に広がる


「なおたんは、普通の人ではないよね〜?」

「はい。普通、ではないですね」


苦笑いを浮かべながら言う。もう妖になった姿は見られてるんだから今更誤魔化そうとしたって出来るわけがない。


「でも、先祖返りじゃないんだよね〜」

「そうだと思います。"先祖返り"って言葉をまず聞いたことが無いですし…」

「でも妖怪ってわけでも無いんでしょ?」

「しいて言うなら、人と妖の中間ですかね…」

「そっか〜」


そのあともつらつら〜と、あの独特な口調で色々聞かれた。…まぁ、よくわからないこともいっぱい含まれてたけど…


「なおたんの話を聞いて、なおたんを"見た"結果、信じがたい話だけど、どうやらなおたんは違う"セカイ"から来ちゃったみたいだね〜」

「…そうなんですか」

「あれ〜?意外と驚かないんだね〜」


まぁ、なんとなくそんな気はしてましたから。と苦笑いを浮かべて返した。

だって違うから。
空気が雰囲気が、妖たちの気配が。小さい頃から感じてきたんだから違いなんてすぐにわかってしまったの。


「なおたんはこれからどうするつもりなの〜?」


カップを片手に残夏さんは私にたずねる。…これから、か


「帰れるまで、なんとか生き延びますよ。…帰らなくちゃ、いけない理由だってある」


外を見るといつの間にかもう夕陽で真っ赤に染まっていた

この時間で、今日寝る場所を確保するのは辛いかな…。なんとかするしかないんだけどね


「なおたん、なおたん〜」

「?なんですか」

「泊まるところに困ってるでしょ〜?ボクがいいとこ紹介してあげようか〜?」

「いいんですか?」


残夏さんは悪戯気に微笑むと、すっと人差し指を床に向けた


「ここ。」

「…えっ?」

「だから、帰れるまでここに住めばいいよ〜」

「えっ、それはちょっ…」

「はい、決定〜。皆に挨拶しにいかなきゃね〜。ほら、行こう?なおたん」


断りの言葉を紡ぐ暇もなく、私は再び残夏さんに引きずられて他の人がいるラウンジまで連れていかれた。

最初こそ残夏さんの言葉に皆さん驚いていたみたいだったけれど、残夏さんの巧みな言葉づかいにより、最終的には私はここに住まわせてもらえることになっていた


「なおたんも今日からここでボクらと楽しく暮らそうね〜」


笑って頭を撫でてくれた残夏さんに、お兄ちゃんに撫でられたときと同じくらいの安心感が沸き上がる

ありがとう、残夏さん。なんて少しだけ恥ずかしいけれど軽くはにかみながら言うと

ボクはちょっぴりお節介なみんなの残夏お兄さんだからねって、残夏さんは三日月の形の口を更に持ち上げた



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