――…


「―、―菜和!おい、菜和!」

「―…っ!」

「菜和?やっと起きたのか、よかった…」

ゆっくりと目を開ける。
そして目の前の人に思い切り抱き着いた


「お兄ちゃんっ…!」

「!どうしたんだよ、菜和…」


驚きながらも私を受け止めて、宥めるように撫でてくれるのは間違いようもなく大好きなお兄ちゃん

嬉しいはずなのに、少しだけ寂しさを感じるこの気持ちはなんなのだろうか


「あれ、菜和」

「…ん、なに?」

「その手首の紐どうしたんだ?」

「えっ?」


お兄ちゃんに言われて手首を見てみれば、そこには残夏さんがくれたあの髪紐があった

じんわりとあたたかさが胸に広がっていく


「お前、そんなの持っていたっけ?」


不思議そうなお兄ちゃんにとびきりの笑顔で私は答えた


「うん!大切で大好きな人からもらったの!!」



短かったけれどあたたかった日々。

出会った大切な人たち。

夢のようで現実だったあの日々

忘れることなんてないのだろう。

あの人がくれた日々の証があるのだから――…



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